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役に立つ経済学 大嶋正治BOIアドバイザー

第11回 ・ 改革は加速したか

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外国商工会議所連合会が大統領に提言した経済発展のための改革案の進捗状況評価

 先月26日に外国商工会議所連合会が開催した「アランカダ・フィリピン討論会〜潜在力を実現させよう!」に参加して来ましたので、その様子を皆さんに紹介します。

 そもそもアランカダ・フィリピンとは、2010年12月に就任間もないアキノ大統領に対し、外国商工会議所連合会が提言した471項目からなる経済発展のための建白書です。そして提案した改革案の進捗(しんちょく)状況を昨年、今年と定期的にレビューし、フィリピン政府に対し、その結果を報告するとともに、改革の遅れや問題点を指摘することにより、改革の前進を支援しようとするものです。進捗状況は6段階で評価され、今回の評価は表の通りです。

 我々は「遅々として進む」という表現を発展途上国での物事の進展状況に対してよく用います。これは数週間、数カ月単位で見ると、ほとんど停滞しているように見えるものが、数年単位で評価してみると、実は進捗していたという場合が間々あるからです。

 筆者が1996年から2000年までタイに駐在していた時には、レムチャバン港の開業、バンコック外環状線の建設、高架鉄道完成、地下鉄工事の継続、新空港移転計画等インフラ関連プロジェクトが同時並行で計画立案され、工事が始まったため、市内も郊外も建設工事だらけで、交通渋滞にさらに拍車が掛かっていました。

 しかし、現在ではこれらのインフラが全て完成して経済成長を支えて、外国企業の投資を呼び込み続け、洪水の被害をも乗り越えて、力強い経済回復に貢献しています。

 それに対して、フィリピンはどうでしょうか。確かに、昨年1年間で58件の提言が進捗をみて、比率では13%前進しました。四つ星以上290件のうち3割の85件は成果をみています。7割の205件はまだ着手したばかりで、具体的な成果は今後の進展次第です。アキノ大統領の目玉施策である官民連携(PPP)プロジェクトの進捗はどうでしょうか。

 当初15件の優先案件を含む38件がリストアップされました。その中で入札が完了した案件は1件だけで、かつ落札後の設計変更を理由に、未着工です。ボホールやマクタンの空港や、MRTやLRTの鉄道延伸案件は入札直前まで来ていますが、その他の案件の進捗状況は不透明です。これを見る限り、現時点では残念ながら、タイとフィリピンの行政府の執行能力に、大きな差が存在することは認めざるを得ないようです。

 実は当初アランカダの提言を行なった際に「2倍早く動け!」と言う副題が付いていました。このような遅れは最初から充分予想されたので、敢えてジャンプスタートが切れるように配慮されたのですが、効果はあまりなかったようです。

 ちなみに今回の副題は「潜在力を実現させよう!」です。折角の潜在力が宝の持ち腐れにならないためのネーミングです。今後は、そのネーミングが実現するように、微力ながらフィリピン政府に全力で協力していくつもりです。(続く)

(2013.3.4)

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