25年予算案に大統領署名 2000億ペソ分には拒否権
マルコス大統領が30日、拒否権を一部発動した25年政府予算案に署名
マルコス大統領は30日、大統領府で2025年度政府予算法案の修正版に署名した。上下両院協議会は今月中旬に総額6兆3520億ペソの政府予算法案を承認し大統領府に送付していたが、公共事業道路省の予算額が教育関連予算を超えるなど憲法違反となる可能性が指摘されており、大統領と閣僚らは2週間ほどかけて予算法案の中身を精査。合わせて約2千億ペソ分の予算項目に大統領が拒否権を行使し、予算減額や予算項目の付け替えなどを実施する異例の措置が取られた。
マルコス大統領が署名した予算法案の修正版は予算総額が6兆3260億ペソとなり、上下両院協議会が承認した予算総額から260億ペソの減額となった。
今回、議会が承認した予算法案で大統領が拒否権を発動したのは、公共事業道路省の予算額の一部である260億ペソ分の予算項目と、使途未定の予算項目1680億ペソの合計1940億ペソ分の予算項目についてだった。
ベルサミン官房長官は「教育関係予算との関係で来年度予算法案で法律的な欠陥となっている部分を救済するために公共事業道路省予算を260億ペソ分引き下げた」と説明している。
議会版の予算法案では教育省の予算が7370億ペソと公共事業道路省の1兆34億ペソに比べて大幅に低く、憲法に抵触するとの指摘が出ていた。しかし、パガンダマン予算管理相は「憲法の規定は教育省の予算額だけでなく、国立大学向け予算や高等教育委員会予算、技術教育技能開発庁予算なども含めたより広い教育関連予算のことを指す」と説明した上で、「大統領による拒否権発動で教育関連予算が1兆79億ペソと公共事業道路省予算を確実に上回ることになった」と自信を示した。
来年1月から履行される予算法案で、教育と公共事業に次いで巨額な予算額が割り当てられたのは国防関連予算でその総額は3151億ペソとなっている。ただし、国軍の近代化事業向け予算は当初の政府概算要求額から150億ペソ削減されている。
また、省別で4~8番目に高額の予算措置を受けたのは内務自治(2791億ペソ)、保健(2678億ペソ)、農務(2374億ペソ)、社会福祉開発(2175億ペソ)、運輸(1237億ペソ)と続いている。
一方、マルコス大統領は、両院協議会が来年度の助成金付与を停止した比健康保健公社(フィルヘルス)への予算措置については、「かなりの水準の留保金を持っている」とした両院協議会の判断を踏襲して、助成金を復活させなかった。労働団体や一部下院議員などからフィルヘルスへの助成金停止に強い批判が出ており、大統領が承認した修正版予算についても批判が高まる可能性がありそうだ。(澤田公伸)