大統領府は9日、バンサモロイスラム自治地域(BARMM)の暫定統治機構(BTA)の新首相をマルコス大統領が任命したことを確認した。フィリピン調査報道センター(PCIJ)の問い合わせに対し回答した。ムラド初代首相に代わるBARMMの2代目首相に任命されたのは、アブドゥルラオフ・マカクア北マギンダナオ州知事。今年10月の自治政府発足選挙後の新内閣結成まで暫定首相を務めることになる。
マカクア氏は暫定統治機構の中核であるモロ・イスラム解放戦線(MILF)の軍事部門、「バンサモロイスラム軍」の参謀総長を経験。和平合意後はBARMM設置までの移行機関「バンサモロ移行委員会(BTC)」委員、BTAの官房長官、同環境天然資源エネルギー大臣、同議員などを歴任。23年にはマルコス大統領によって北マギンダナオ州知事に任命された。ムラド氏が率いる地域政党「統一バンサモロ正義党(UBJP)」ではナンバー2の幹事長を務める。
▽役割分担か
比最大イスラム武装勢力であるMILFの議長(ムラド2代議長)が和平合意を経て暫定統治機構の首相になり、MILFがバンサモロ議会の中心を占めることで安定が保たれていたともいえるBARMMだが、今回の人事でMILFとBARMMのトップが別人物となったことで、地域の不安定化を懸念する声も出た。
BARMMのペンダトゥン官房長官は10日、ABS―CBNニュースに対し、任命状を7日に受け取ったことを明らかにした上で、「ムラド氏はMILF議長でかつUBJP党首でもあり、選挙に注力する必要がある。そんな中、今回の展開は(選挙への集中に)役立つ」と肯定的な見解を表明。暫定首相の交代についてはMILF内部でも様々な議論が行われてきた上での交代であることを説明した。
ガルベス平和・和平・統合担当大統領顧問は10日、声明を発表。「大統領がマカクア氏を暫定首相に任命したことで、ムラド氏が築いた指導基盤はさらに強化される」と歓迎した。国軍参謀総長、国防相(代行)を歴任しているガルベス氏は、「私は個人的にも、地域の平和と安定に対するマカクア氏の決意と粘り強さを目撃してきた。同氏の任命はバンサモロの現状と合致している」とした。(竹下友章)