バンサモロ暫定統治機構(BTA)のモハメド・ペンダトゥン官房報道官は3日、外国人特派員協会(FOCAP)の年次フォーラムで、昨年最高裁がバンサモロイスラム自治地域(BARMM)からのスルー州を分離する決定を下して以降混乱が続いているバンサモロ地域の展望について語った。
バンサモロ自治政府発足のための選挙の延期期間が、BTAが求めていたより短い5カ月延期になったことについてペンダトゥン氏は、「除外されたスルー州に割り当てられていた7選挙区を再配分するのには十分な時間だ」と明言。「中間選挙と同時に実施されて埋もれるより、全国の関心がバンサモロに集中する次期に行うほうが好ましい」との見解を示した。その上で、「ラマダン空けにBARMM議会が再開すれば直ちにこの問題は議論される」とした。
BTAの中心となっているモロ・イスラム解放戦線(MILF)の戦闘員の退役が遅れていることについては、「和平プロセスのフェーズ1から3までで2万6145人が退役している」とした上で、最後に残る約1万4000人の退役については、「その前に退役戦闘員への支援パッケージが実質的に提供されたことが双方に確認される必要がある。社会経済パッケージには部分的に提供されていないものもある」とし、現行の支援パッケージの完全な履行を待っている段階とした。
自分の政権期にモロ族への迫害・弾圧を行ったとされる故マルコス元大統領の息子である現大統領への評価にについては、「一部では政権発足当初から、現政権下でのバンサモロ和平プロセスについて懸念があった」と明かした上で、「今のところマルコス大統領は誠実に和平プロセスを推し進めており、そのことに一部の人は(いい意味で)驚いている」と説明。「自治政権への移行が地域だけでなく国全体の取り組みで実現することに依然として楽観的だ。現政権で和平プロセスが完了することが望ましい」とした。
昨年9月の最高裁によるスルー州除外判断については、「今でもスルー州抜きのBARMMというのをいまだに頭の整理がつかない」と率直に語った上で、「行政上の形式としてはBARMMから分離したが、歴史、物語という点ではスルーが外れることはない。われわれのリーダーの多くはスルー州出身で、スルーがなければわれわれはここにいない」とし、「今年もスルー州の各種事業は継続する」と明言した。
「暫定統治機構の中核であるMILFの率いる統一バンサモロ正義党(UBJP)が選挙で敗北した場合、不安定化するリスクが指摘されている」との質問には、「大きな課題は、まず投票率の高い選挙を確実に実施すること。次に、前回の選挙と比較して、正直で信頼でき、そしてより平和な選挙にすることだ」と強調。「有権者が、公正かつ公平で、投票権が奪われず、混乱したり差別されたりすることなく自由に投票できた、あるいは権利が奪われなかったと感じれば、最終的にどの政党が優位に立とうが、和解につながる」と述べた。その上で、「選挙日程の延期もこの点で有利だ」とした。(竹下友章)