遠藤大使がBARMM初訪問 バンサモロ包括和平合意10周年
遠藤大使が着任後初めてバリンドン・バンサモロ議会議長とバンサモロ暫定自治政府のイブラヒム首相を表敬訪問
遠藤和也駐フィリピン日本国大使は、18日から20日にかけてコタバト市を中心とするバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)を着任後初めて訪問し、バンサモロ議会のバリンドン議長やイブラヒム首相らを表敬訪問した。在比日本大使館が20日発表した。
遠藤大使は18日、バンサモロ暫定自治政府のアホド・イブラヒム首相を表敬訪問し、日本政府の積極的な支援などによりノイノイ・アキノ政権下の2014年3月下旬に締結されたバンサモロ包括的和平合意署名10周年への祝意を表明するとともに、和平プロセスの成果と今後の課題について意見交換を行った。
遠藤大使は、地域における平和の定着に向け、日本政府が今後もミンダナオ和平支援に積極的に関与してゆくとの意思を伝えた。これに対しイブラヒム首相からは、日本政府の長年の支援に対する謝意とともに、今後の継続的な協力への期待が表明された。
遠藤大使はまた、18日にバンサモロ議会のバンガリアン・バリンドン議長を表敬訪問し、同議長やラナン・アリ副議長、ハティミル・ハッサン院内総務やメアリー・アルナド副院内総務らから歓迎を受けた。大使はバリンドン議長をはじめとする議会関係者と、議員内閣制を導入したバンサモロ議会における民主主義の定着に向けた取り組みの現状や、優先規程の審議状況などについて意見交換を行った。
比政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)の間で締結されたバンサモロ包括的合意の署名に関する10周年記念式典は今年3月下旬に開かれ、マルコス大統領が参加している。バンサモロ議会は来年5月の中間選挙において、初めてとなる同議会議員選挙を行う予定になっている。
▽政府開発援助の現場訪問
遠藤大使は19日、令和5年度日本政府補正予算により国際移住機関(IMO)が実施する「ミンダナオにおける持続的和平・治安維持メカニズム強化」プロジェクトの事業地の一つである、北マギンダナオ州ウピ町にある合同和平治安チーム(JPST)のガナシ駐屯地を訪問した。バンサモロ包括的和平合意事項の履行が完了するまでの移行期間に、国軍と国家警察、MILF軍事部門の要員が合同で地域の平和と治安を維持するために設立されたJPSTは現在、24カ所あるが、そのうち10カ所は日本政府が19年に設立を支援した。ガナシ駐屯地を含む4カ所の建物の修復が必要になったほか、同駐屯地周辺のコミュニティ4カ所に対する生計向上支援を行うことになっている。
日本政府はJPST要員向けの再研修モジュールの作成や研修講師の育成、車両・バイク・通信機器等の器材供与も実施し、JPSTが展開する24カ所のコミュニティの平和と治安の安定促進を目指す計画。
また、遠藤大使は19日、北マギンダナオ州パラン町において実施された「バンサモロにおける食糧安全保障強化と生計向上支援」事業による生計向上器材の引き渡し式に参加した。
同事業は令和4年度補正予定による230万ドルの拠出金により国連開発計画が実施しており、BARMM及びその周辺地域の16コミュニティの約3150世帯の住民に緊急食糧支援を行うほか、30以上のコミュニティで農業や漁業に従事する住民を対象に生計向上支援を実施している。
パラン町においては今回、太陽光製氷機を役場に供与しており、漁民の収入向上に役立てる。(澤田公伸)