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4月26日のまにら新聞から

「非戦闘員退避作戦も議論」 台湾有事を念頭に米軍司令官

[ 1098字|2024.4.26|政治 (politics) ]

比米両軍は22日に始まった総合合同軍事演習で、台湾有事を念頭に入れた非戦闘員避難に関する幕僚間の意見交換を行う

記者会見を開いた米海兵隊第一遠征軍のセダホルム司令官(左)と比国軍のバリカタン責任者のルクディン少将(右)=24日、首都圏ケソン市国軍本部(キャンプアギナルド)で竹下友章撮影

 フィリピンと米国の総合軍事演習バリカタン参加のため来比している米海兵隊第一遠征軍(本拠地・カリフォルニア州)のマイケル・セダホルム司令官(中将)は24日、国軍本部で開いた会見で、「今回のバリカタンでは軍事攻撃が発生した際の非戦闘員退避作戦(NEO)について閣僚間の議論を積極的に行うつもりだ」と述べた。その上で、来年のバリカタンにNEO訓練を含めることを検討する意思を示した。比国軍のバリカタン責任者マービン・ルクディン少将も「大規模な民間人の退避訓練は人道支援訓練に含まれ得る。今後パートナー国と議論する必要がある」と述べた。比国防筋によると、今年のバリカタンの指令・統制訓練の中で、「台湾有事」を念頭としたNEOに関する意見交換を行う予定という。

 NEOは台湾有事が発生した際に、約15万人いる在台比人就労者を大量避難させるため必要となる作戦。今月の比日米首脳会談に伴い出された共同声明は、「いかなる『危機や偶発的事態』にも共同で対応するため、2025年のバリカタンにも統合され得る多国間人道支援・災害対応訓練を立ち上げる」ことを明記。また、ブラウナー比国軍参謀総長は同作戦について比日部隊間協力円滑化協定(RAA)締結後の自衛隊の協力に期待を示している。

 

 ▽中国船と遭遇も想定

 排他的経済水域(EEZ)で実施される初の比米仏合同演習を前に、比のEEZ内に中国民兵船が確認されたことについて、比国軍のルクディン少将は「司令部は中国民兵の存在とそれに付随する問題に対しては、大きく作戦上、戦術上の考慮に入れている」と述べた。セダホルム米遠征軍司令官は「われわれの大統領は比米相互防衛条約(MDT)を順守することを明言している」と強調し、万一の事態には米軍が比を守ることを示唆した。

 マルコス大統領は今月、外国の海軍や海上保安機関、民間船舶からの攻撃を受け、比職員が死亡した際、MDTが発動することを米国側と確認したことを明らかにしている。

 今回初めて中距離ミサイルSM6とその発射システム(タイフォンミサイルシステム)を迅速配備する訓練を行うことについて、「中国が警戒しているのでは」との質問に、セダホルム司令官は「中距離射撃能力は防御的なものだ」と説明。その上で、同ミサイルを複数地点に配備する訓練を行うとした。

 SM6の射程は300カイリ(約560キロメートル)。EEZ=基線から200カイリ=の外の標的を攻撃する能力を有する。米インド太平洋陸軍のフリン司令官は今月、日本で年内に「中距離射撃能力」をインド太平洋地域に配備する意向を発表している。(竹下友章)

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