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5月6日のまにら新聞から

「現政権とも合意していた」 「紳士協定」で中国大使館が声明

[ 1368字|2024.5.6|政治 (politics) ]

中国「マルコス政権とも南シナ海問題での合意を結び、一度合意に基づき補給任務が実施された」

 在フィリピン中国大使館は4日、南シナ海アユギン礁(英名スカボロー礁)への比の補給任務に関し、今年はじめに現政権と新合意に達しており、2月に一度新合意に則って補給任務が実施されていたとの声明を発表した。その上で、2月の補給任務は「(新モデル)新合意に沿って比中双方が連絡を取りながら行ったため問題が生じなかったが、合意が履行されたのは2月の一度のみで、その後は比側が理由もなく反故(ほご)にしている」と比政府を批判した。比が実効支配を固めるために1999年に海軍艦「BRPシエラマドレ」を座礁させているアユギン礁では、昨年以降、比側の補給任務のたびに中国海警局・民兵船によるレーザー照射や進路妨害、放水事件が発生していたが、今年2月2日の補給任務は中国による妨害が全く発生していなかった。

 中国大使館は「前政権(ドゥテルテ政権)期に両首脳間で『紳士協定』を結んだが、現政権では補給任務を実施している国軍西部司令部を通じて、紳士協定を踏まえた『新モデル』の合意に達した」と説明。新モデルは「紛争管理、衝突回避、平和維持を目的とした、信頼醸成の手段であり、主権に関する両国の主張とは無関係」とし、この新合意については、テオドロ国防相、アニョ国家安全保障担当大統領顧問を含む全ての国防関係の高官の承認を得ていることを「繰り返し確認」しており、全ての交渉、連絡は「中国側によって詳細に記録されている」とした。

 さらに「昨年7月5日に、中国大使がテオドロ国防相を表敬訪問する機会を得られたとき、会談の中で、比側は紳士協定について説明を受けている」と述べた。

 その上で、「こうした内々の理解と手配があったにもかかわらず、平和と平穏が仁愛礁(アユギン礁の中国名)で繰り返し乱されたのは遺憾だ」とし「なぜ、比政府はこの理解と手配を否定し、抵抗し続けるのか。なぜ比国防省は海洋問題を対話と交渉によって適切に管理することを拒否するのか。なぜ衝突の回避に効果的であることが証明されたモデルが1回限りで破棄されるのか。誰がこのモデルの破棄を決定したのか」と次々疑問を表明。「(比中が)相違点を管理し、摩擦を回避することは、『特定の勢力』の利益に反するからなのか」と述べた。

 中国外務省や中国共産党メディアはこれまで、「米国は南シナ海問題を口実に、同海や比国内の軍事プレゼンスを高めようとしている」と警戒感を示してきた。

 ▽中国による「策謀」

 テオドロ国防相は5日、反論の声明を発表。「国防省が『新モデル』の当事者であるというほのめかしは、中国の策謀だ」と宣言し、「ハワイで行われた比日米豪防衛相会談の直後に出されたというのも奇妙だ」と指摘した。

 自身も「紳士協定」の説明を受けたと名指しされたテオドロ氏は、「国防相就任直後に受けた黄渓連大使の表敬以後、国防省と中国当局のいかなる接触も禁じてきた。表敬訪問時、いかなる『紳士協定』や『新モデル』に関する議論や説明もなかった」と完全否定。「これは国民を分断し、比の排他的経済水域(EEZ)で違法行為を続けている事実から注意を逸らすための虚偽だ」とした。

 現政府は、前政権期の「紳士協定」について当初その存在を否定していたが、後にマルコス大統領がその存在を認めている。(竹下友章)

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