破られた誓い 石炭事業で起死回生狙うも
(論調)アジア最大の複合企業のひとつであるサンミゲルは再生可能エネルギーへ移行するという誓いを反故にし、生態系に悪影響を及ぼす石炭事業で賭けに出た。
アジア最大の複合企業のひとつであるサンミゲルは再生可能エネルギーへ移行するという誓いを反故にし、生態系に悪影響を及ぼす石炭事業で賭けに出た。赤字のエネルギー事業の起死回生を狙っている。
ラモン・アン社長は「よりクリーンな石炭発電施設を作る技術をもつが、同施設の建設計画からは遠ざかっている。これは数年間取り組んできた持続可能な当社の方向性」と述べた。
しかし、これは南コタバト州の住民にとって、リップサービスにすぎない。子会社のサンミゲル・エネルギーはダグマ・アグロ・ミネラルズ、スルタン・エネルギー、ボナンザ・エネルギー・リソーシズの3社の鉱区を買収後、1万7千ヘクタールにも及ぶ巨大な炭鉱に巨額な投資を行ってきた。世界経済がコロナ前の活気を取り戻し、東欧紛争の影響で石炭需要が急増し石炭価格が上昇し続けるなか、サンミゲルは先端技術を使用すると国民に約束したにもかかわらず、より汚染物質を排出する低品位炭に手を出した。
南コタバト州自治体では2010年以来、露天採掘を禁止しており、サジタリウス・マインズ社の銅や金の採掘事業を妨げてきた。しかし、今年のはじめ同州の委員会は露天採掘禁止の解除を勧告するよう強い圧力がかけられていた。サンミゲルは坑口石炭発電所の建設も計画しており、すぐに石炭事業を手放すことはないだろう。
住民によると、ストリップマイニングは露天採掘の別称にすぎない。アン社長は現場を訪問した際、採掘事業により移転した村人には移転先での住居や土地を提供することを宣言した。また同事業の雇用についても「資格によっては」と条件付きで約束した。地元職員によると、村の部族長に1ヘクタールあたり12万ペソを提供し、仕事も優先的に斡旋されることで、土地の売却に同意したという。サンミゲルは企業としての責任、約束を守れていない。(1日・トリビューン)