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1月16日のまにら新聞から

ロサレス町の誕生日 故郷の歴史を訪ねる意義

[ 1108字|2022.1.16|社会 (society)|新聞論調 ]

 全ての町が自身の誕生日を祝うわけではない。もし、全市町がその創建日を認知すれば、フィリピン人の時間と場所の感覚が磨かれるだろう。私の故郷であるパンガシナン州ロサレス町は、11日に町の誕生日を祝う。カサレノ町長はその日を喜びと祝福の日とすると宣言している。

 この行事は、歴史家アドリエル・メインバン博士が比国立公文書館から町の成立過程を記録したスペイン語の文献を発見したことに端を発する。もちろんその文献に記された歴史は、私が小説「ポオン」で、スペイン統治時代末期を舞台に描いたフィクションの物語とは異なる。しかし、この小説はそう事実と遠くない。

 ロサレスのような町の成立は、狭小な沿岸平地を離れより広い土地を求めたイロカノ族の移住に由来する。例えば、北部のカバラオナン・ビレッジはラウニオン州ボラオナンからきている。カブガワンという地区名は南イロコス州カブガオ町の人々がこの地区に移住したことを表している。この町ではシソン、ソメラ、ソリベンなどSから始まる姓はカブガオ町出身者のものだ。

 幼いころ、頑丈な木の車輪とブリ(コウリバヤシ)の屋根を付けた荷車を牛や水牛に引かせたキャラバンが、カガヤン渓谷に向かう長い旅の途中に町の広場に停まっていた姿が今でも鮮明に思い出される。

 メインバン博士が発見した文書はすべてスペイン語で書かれており、ラウニオンの政治的リーダー、メリー・オルテガ氏(アテネオ大講師)が英語に翻訳中だ。それに先立ち、メインバン教授は、丹念な資料の吟味に基づいたラユニオン州史を上梓している。同様に、ロサレス町史の編纂のため、渡米し研究を進める予定だ。米国公文書館から当時の資料を探し、米国統治下での町の発展も描きたいからだ。

 ロサレス町の歴史的重要性は、「ポオン」でも書いたように、革命政府がタルラック州に本拠地を起き、革命政府の指導的思想家・官僚だったマビニがアギナルド大統領に解任されたとき、彼がロサレス町に逃れ、数カ月滞在していたという点にある。また、隣町のバルンガオには温泉があり、マビニは熱を出したときに湯治に訪れている。

 すべての小さな町には固有の物語がある。それを発見し、何がその町を唯一無二にしているかを理解するのは、その町の歴史家や住民の役目だ。それぞれの町に、人々の心の中に生きているオーラルヒストリーだけでなく、文字資料に基づく歴史があることを願う。

 町の物語は、私たちを共同体の感覚で束ね、郷土愛と連帯責任の感覚を涵養する。このような過程を経て、私たちは真の意味での「国民」としてまとまることができるのだ。(10日・スター、作家シオニール・ホセ)

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