独裁政権の評価 高慢なマルコス上院議員
マルコス上院議員のうぬぼれた態度に、最近磨きがかかっている。独裁者、故マルコス元大統領の息子である彼は、ミンダナオ和平に関する審議などで政府を批判する急先鋒となっている。一部国民の間では大統領選出馬への期待すら高まっている。
こうした支持者は、決まって「マルコス政権下ではフィリピン社会は平和と秩序に包まれながら、経済発展を達成、政府が正常に機能していた」と主張する。シンガポールの初代首相が亡くなった際、マルコス上院議員は「アキノ政変(エドサ革命)が起こらず父の政権が続いていれば、比はもう一つのシンガポールになれた」と、正気とは思えない発言をした。
テレビ番組に出演した際には父が発令した戒厳令を正当化した。さらに「一体、何について謝ればよいのか」と述べ、マルコス家が謝罪する必要はないとも主張した。
この主張は国民受けするだろうが、事実に反している。マルコス政権は、コファンコ家など自身に近い一部に富を配分した。バタアン原発の建設では、マルコス元大統領や協力者が当時8千万ドルもの賄賂を受け取っていたことが裁判資料から明らかになっている。報道の自由はなく、テレビや新聞は情報省に管理されていた。人権被害者への補償はいまだされておらず、不正蓄財も国に戻ってはいない。
こうした事実は歴史の教科書に記載されていない。マルコス政権時代を知らない若者は「あのころの比はよかった」と嘆く。誤った分析を基にしてマルコス政権を高く評価することは、独裁の事実よりも悲劇的である。
マルコス議員が高慢な態度で振る舞ったとしても、不名誉を打ち消すことはできない。(30日・インクワイアラー)