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1月19日のまにら新聞から

教会は自己反省を ローマ法王来比

[ 736字|2015.1.19|社会 (society)|新聞論調 ]

 祝福だけでなく、自省も必要だということを法王の訪問が示している。人口1億人のうち8割がカトリック教徒のフィリピンでは、高級ブランドの店や高級外車と、物乞いをする子供たちや路上生活者が共存する貧富の差の大きい国だ。

 比では家族計画を推進する人口抑制法=2012年12月成立、14年4月に一部違憲の判決=に対し、実際には貧困層を救う制度であるにもかかわらず、聖職者たちが猛反発した。聖職者たちは新たな命を「神の贈り物」として制限すべきでないと主張しているが、国内で職に就けない比人が海外に出稼ぎし奴隷のように扱われるのが現実だ。

 比には2つの教会の姿があることを理解しなければならない。

 1つは儀式や慣例を重視し、富と権力が支配する「制度的教会」。ちょうど1週間前に起きた事件のように、儀式が地域に定着した場合、問題が悪化する。それは1月9日に首都圏マニラ市での黒いキリスト像「ブラックナザレ」の巡行で、死者2人を出したことだ。聖像に触れた手ぬぐいを身につけると病が治るなどの信仰があるため、巡行中、信者らはこぞって手ぬぐいを聖像に投げる。信者らの献身は純粋なものだが、死亡事故には困惑させられる。

 もう1つは社会的活動に信念を置いている「変容する教会」。聖職者は貧困層の住宅密集地や田舎に好んで住み、彼らを教え悟し、貧困から解放する。富と権力による介入があれば、彼らは神の意志が満たされる厳しい道を選ぶだろう。

 ローマ法王フランシスコの訪問は、この「2つの教会」の間にジレンマがあることを提起した。貧困層の支援に積極的な法王は、権力を振りかざす者たちと密接な関わりのある比のカトリック教会に重要な課題を突きつけている。 (16日・インクワイアラー)

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