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4月1日のまにら新聞から

公教育の立て直しを

[ 724字|2013.4.1|社会 (society)|新聞論調 ]

比大生の死の問い掛け

 女子学生が自殺したフィリピン大は、授業料を滞納した女子学生を停学させる一方で、金持ちエリート家庭出身の学生に多額の政府補助金を使ってきた。

 比大の授業料は年間36単位で最高5万4千ペソ。富裕層にとって小銭にすぎない額にとどまっているのは、補助金があるためで、実際の「授業コスト」は、デラサール大などと同レベルの15万ペソ程度とされる。

 有名私大の3分の1程度の額で、優秀な学生が優れた教育を受けられるのは結構なことだ。しかし、問題は比大学生の少なくとも5割以上、もしかしたら8割近くが富裕層出身者で占められているという点にある。

 大衆に迎合する政治家や左派系活動家は補助金増額の必要性を訴えるが、われわれの納めた血税の大部分が裕福な家庭の子供たちのために使われていることを忘れてはならない。教育の機会均等という本来の目的のため、補助金を役立てるならば、学生の家庭を年収で分類し、授業料の額を増減させるのも一策だろう。

 富裕層が比大学生の過半数を占める現状も問題だ。1960〜70年代までは、マニラ市トンド地区やケソン市クバオ、国軍基地内にある公立高校が健闘し、有名私立高校と比大入学者数を競い合っていた。貧富とは無関係に、優秀な若者に社会の階段を上がる機会を与える仕組みが有効に機能していた。

 その後、教員の海外流出などで公教育の質は低下の一途をたどり、有名高校出身者が比大入学者の大半を占めるようになった。そんな中で起きた女子学生の自殺。その死が突き付けている課題は、補助金増額などの対症療法ではなく、教育の機会均等と適正な授業料制度の再構築という本質的問題だ。(27日・タイムズ、リゴベルト・ティグラオ氏)

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