前途多難な和平
枠組み合意署名
政府が大統領府で反政府武装勢力、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と署名したのは、和平「枠組み」合意であり、最終合意に向けての議題や枠組みの内容で合意したにすぎない。しかも、最終合意に至る交渉期限は、アキノ大統領が政権を去るまでの3年間と限られている。大統領は明らかに、政権の去り際を栄光の和平文書締結で飾りたいのだろう。そのような期限設定や意図こそ、政府の交渉団にとって、不利になるだろう。MILF側も今後、さらに厳しい要求を突きつけてくるに、違いない。
十分に議論されていない難題がいくつもある。一つは、武装解除の問題だ。政府が国内法に基づき、銃器の所持規制を実施したいのに対し、MILF側は高性能銃器を手放したくないと考えている。
MILF武装集団の国家警察への編入問題もある。政府は武装メンバーらが警察学校を卒業できれば、警察に編入することも可能だとしている。では、学力が追いつかず、卒業できない場合、どうするのか。
バンサモロ(イスラム教徒の国)に含まれる地域に住む、イスラム教徒たちとほぼ同数のキリスト教徒や山岳先住民族たちが直面する苦境には、どう対処するのだろうか。バンサモロ政府では、イスラム教徒が行政や司法、警察を掌握することになる。キリスト教徒や先住民たちに迫害を加える恐れがある。
さらに、領域問題がある。バンサモロの領域は現在のイスラム教徒自治区(ARMM)より拡大する。それ以外の地域も住民投票の結果次第で、編入できる。その投票権は対象地域の住民だけなのか、それともバンサモロ域内の全住民なのか。このように、不明確な点が多い。(17日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)