ちょっと待った
レクト礁は自国領ではない
アキノ大統領の施政方針演説で最も喝采を受けたのは、西フィリピン海(南シナ海)にあるいくつもの島や環礁に関する領土問題についてだった。それが気にかかる。大統領は、「今、我々の世界へのメッセージは明白だ。自国領はあくまで自国領。(首都圏マニラ市の)レクト通りを歩くように、(同諸島の)レクト(リード)礁へも移動できるはずだ」と演説した。
この演説は、隣国や世界との関係に暗に危険な意味合いを持たせてしまった。同礁は、比の領土でもその一部でもなかった。これまで領土問題に関する比の度重なる主張は、国連海洋法条約に定められた排他的経済水域(EEZ)に基づいていたからだ。
大統領は、果たしてこうした事実と今回の演説の反響を十分に認識しながら、断固たる主張をしたのだろうか。
第1に、米国とスペインの間で交わされた1898年のパリ条約で、同礁はどの国の領土にもなっていない。第2に、パリ条約後に同礁を発見し領有したと制定した2009年の国内法は、憲法違反として最高裁で係争中だ。同礁には、実行支配地のパグアサ島も含まれている。
EEZは、沿岸国に二つの権利を付与している。第1に、天然資源の探査と開発に関する権利。第2に、人工島や建造物を作る権利。
大統領は、「レクト通りを歩くように、レクト礁へも移動できるはずだ」と言った。これは、同礁はどの国の領土でもないと比喩的に話したに過ぎない。この発言が、比政府の了解なしに同礁の海や空に入ることを許さないと言っているなら、非常に危険なことだ。
領海外の航行の自由は、最も基本的な国際法だ。権利を一方的に主張し、戦争に発展した国があることは、よく知られている。(27日・マラヤ)