笛吹けど踊らず
効果疑問の景気刺激策
世界的な景気後退が深刻さを増すにもかかわらず、アロヨ大統領は総額三千三百億ペソの「景気刺激策」による効果に自信を示している。これに対し経済アナリストのほとんどは、経済危機克服に向けた政府の対策に懐疑的で、実施されても効果は期待できないと悲観的だ。その根拠は、刺激策の原資である三千三百億ペソの調達に早くも赤信号がともっているからだ。
三千三百億ペソの内訳は①政府の追加支出千六百億ペソ②政府系年金・金融機関、民間からの調達千億ペソ③減税措置分四百億ペソ④政府系社会保険・健康保険機関からの追加還元三百億ペソ︱︱。
こうして見ると、景気刺激に直接効果をもたらしそうなのは①と②に限られる。①は二〇〇九年政府予算内に盛り込まれるが、問題は②で、千億ペソもの巨額が直ちに用意できるはずがないからだ。
②の資金は政府系金融機関などと民間部門が分担し、社会保障機構(SSS)、公務員社会保険機構(GSIS)、フィリピン開発銀行、それにランドバンクの四組織が計五百億ペソを四等分し各百二十五億ペソを拠出する。しかし、現時点で判明しているところでは四組織とも、資金流用の名目が立たず、拠出を一切行っていない。それどころか、SSS内には年金用基金の減額を懸念する声さえ出ている。これはGSISでも同様とみられる。
民間では、政府におべっかを使う比商工会議所などが五百億ペソを自発的に支出するとしているが、支出額を公表した企業はまだ一社たりとも出ていない。
結局、今回の景気刺激策で支出可能なのは①の千六百億ペソのみ。刺激策は「笛吹けど踊らず」状態で、効果は期待できない。(2月26日・マラヤ)