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8月1日のまにら新聞から

「墜落」へ向かう比

[ 678字|2005.8.1|社会 (society)|新聞論調 ]

空疎な施政方針演説

 施政方針演説でアロヨ大統領は、下院議員や地方自治体関係者の耳に心地よく響く「憲法改正」に演説時間の大半を費やした。その反面、八月中に提出されるであろう二〇〇六年政府予算案の詳細や中央選管改革、財政再建計画には一言も触れなかった。

 このような空疎な演説では、選挙不正疑惑などに端を発した政治問題は決して解決しない。比国債の格付けが上がることもなく、外国人投資家に対する「経済改革を断行するので、さらなる投資を」という呼び掛けもむなしく響くだけだ。

 演説を通して浮かび上がったのは、国や国民に犠牲を強いて、自らの政治的生き残りを図ろうとする大統領の姿だった。議場を埋めた下院議員、傍聴席の地方自治体関係者は、拍手やスタンディングオベーションで「大統領支持」を演出し、大統領は政治的な借りを埋め合わせるために改憲推進を表明して見せた。

 議院内閣・首相制移行を柱とする改憲は決して政治危機を解決しない。

 世論を無視して大統領を続投させるような国会議員が、改憲議会で好きなように憲法を変える状況を想像してもらいたい。新憲法下では、首相に不信任決議案の一つも突き付けないような一院制の議会が生まれ、行政・立法府一体となった新政府が国民の声を無視した政権運営を続けるだろう。

 言うまでもなく、国は今、史上最悪の政治・経済的危機に直面している。そのような危機の最中に大統領は国民や投資家、各国外交官を小ばかにするような演説を行った。「比経済は離陸しようとしている」と大統領は言うが、国を待っているのは離陸ではなく「墜落」の二文字だ。(7月27日・トリビューン)

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