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8月1日のまにら新聞から

国民不在の「取引」

[ 674字|2005.8.1|社会 (society)|新聞論調 ]

大統領の改憲推進表明

 政治的ご都合主義は、政治家として要求されるものと必ずしも一致しない。施政方針演説でアロヨ大統領は、政権与党ラカスの幹部らに迎合するため、国民が求めている選挙不正疑惑などに関する説明を一切行わなかった。

 大統領と同党の関係はこれまで決して良好とはいえなかった。しかし、同党幹部らは自分たちの聞きたいことを大統領に語らせることに成功し、一方国民はおざなりの呼び掛けばかりを聞かされることとなった。

 演説で大統領は「退歩した政治制度が国の発展を妨げている。われわれ政治家は政治制度の緊張度を限界にまで高めてしまった」と指摘した。演説はある意味で真実だろう。しかし、演説は「緊張を高めた大統領の政治責任はどうか」という、最も基本的な問い掛けには答えなかった。

 「緊張」を生み出しているのは、「大統領は本当に合法的な方法で当選したのか」という国民の疑念にほかならない。大統領自身がこの問いに答えない限り、国を前進させることなどできないのだ。

 言うまでもなく、大統領演説の背後には、捜査当局に情報を提供して罪を軽減してもらう「司法取引」があった。ラカスは改憲推進を大統領に語らせ、その代わりに「体面を保つことのできる辞任」を約束した。国民不在の取引だったことは言うまでもない。

 国民の大部分は大統領の有罪を確信している。大統領弾劾という有罪判決が下るかどうかは今後の展開次第だが、当の大統領は辞任や弾劾を求める世論をよそに「ラカスの組織力が弾劾から我が身を救ってくれるだろう」とソロバンをはじいて取引に応じたようだ。(7月27日・インクワイアラー)

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