ハロハロ
「暑くなってきましたネ」。犬と散歩に出掛けた先日の朝、近所に住むフィリピン人の奥さんに笑顔で声をかけられた。「時候のあいさつ」が日本人特有の風習ではないことを、初めて身近に知った。事実、今年の3月は初旬から例年になく暑い。拙宅は、首都圏南郊の海抜約300メートルの丘陵地にあるので、気温が30度を超えることはまずないが、このところの晴天続きで、すぐ目の前にそびえるマキリン山は朝から稜線をくっきり青空に刻んでいる。
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2月初旬から雨らしい雨が降らない。近くのゴルフ場にある深さ3メートルほどの池はすっかり干上がって、ゴイサギそっくりの白い水鳥が池の底を歩きながら、小魚をついばんでいる。夏の到来が近いせいか、例年、日本から「花便り」が届く3月下旬から4月にかけて咲く、色が桜そっくりの「カカワテ」(マドルライラック)は、すでに2月下旬から花をひらき、いつもは4月に花期が始まるバナバ(オオバナサルスベリ)も薄紫の花をつけている。
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先発組はもう日本に向かったのか、ラグナ草原の空を飛び交うツバメの数が今年は少ないように思う。ルソン島に生息するツバメは、『日本大歳時記』(講談社刊)によると、3月20日、九州の鹿児島、宮崎、長崎各県、四国の高知、愛媛両県などに姿を見せるという。「つばめ来る」は俳句の春の季語。「来る」というのは、南の国が「本籍地」だからだ。「今来たと顔を並べるつばめかな」(一茶) 3月6日記す。 (濱)