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4月24日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 633字|2017.4.24|社会 (society)|ハロハロ ]

 4月中旬の土曜日の正午前。週末には必ず足を運ぶ地元の市場で、ブランチと買い物を終え、アパートに戻る途中で目にした光景が印象的だった。インドネシア・ジャワ島は今、雨期から乾期に移り変わるほぼ真ん中。その日は、前夜の激しかった雨がやみ、朝から太陽が顔を出していた。その中、左手に野菜類、右手にはバナナ、マンゴーなどのトロピカルフルーツを下げ、乾期到来近しを告げる強い日差しを浴びながら歩いていた。

 体格からして10歳ほどと見受けた地元の少年が光の中から姿を現し、前方に建つ高層アパートに沿って造られた側溝の前に立った。仁王立ち姿の少年が手を前にやり、腰を2、3度振った。すると勢いよく飛び出した「水」が、南国の陽日を受けてキラキラと輝き、放物線を描きながら側溝に吸い込まれていった。すべてを側溝内に出し切った少年は、何事もなかったように、小走りで仲間のところに戻っていった。

 少年と私の年齢差は約60歳。小さいながらも、見事な放物線を描ける元気さに思わず見ほれてしまった。と同時に頭の中をよぎったのは、自らの「水」が放物線を描かなくなって、いや描けなくなってから、既にどのくらいの歳月が過ぎただろうかだった。そう考えて寂しさにとらわれたり、残り少なくなったこの世での日々にため息をついたわけでもない。だが、正直なところ、放物線を描けたころに一瞬でもタイムスリップできたらと思ったのは間違いない。失った放物線に思いをいたし、「来し方」を重ねた。(道)

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