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12月9日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 597字|2013.12.9|社会 (society)|ハロハロ ]

 明治の文豪・森鴎外が最晩年に、楽劇王ワーグナーの名作「トリスタンとイゾルデ」をドイツ語で歌いながら独り夜を過ごしたのは、よく知られている。若きドイツ留学時代の恋人「舞姫」を思い浮かべていたにちがいない。ワーグナー生誕200年に当たる今年、電子メディアにはワーグナー狂たちのメールが飛び交ったが、鴎外に触れたのは見当たらなかった。

 話しの種にと今春、ワーグナーの最後の楽劇「パルジファル」を東京・渋谷でみた。とは言っても、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)で上演した「映画版」を、である。3幕物でワーグナーのオペラの中では最も荘厳とされる。ドイツのバイロイト歌劇場での初演に際し、ワーグナーは全幕間での拍手を禁じたといういわくつきのオペラである。今もバイロイトやウィーンでは、第1幕の終わりでは拍手をしない習わしとか。

 「映画版」では、全幕間でMET観客の大喝采があった。しかも幕間には、大道具の舞台直しの音や映像を背景に、出演者のインタビューや原作をめぐるエピソードの紹介もある。MET上演からさほど日数をおかず、格安の料金で楽しめるのだからこたえられない。同時に米国人の商魂のたくましさにも驚かされる。米文化の影響が色濃いフィリピンでも、METの「映画版」があるのでは、と自宅近くの映画館へ出掛けた折りに聞いてみたが、どうやらまだ上陸してはいないようだ。(邦)

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