遠のく先進国入り
不安定な電力供給
安定した電力供給がなければ、貧困問題の解決はさらに遠のく。欧米人が享受しているような生活を実現できないだけでなく、かつて比の後じんを拝していた近隣諸国に、さらに後れを取ることになる。
統計上、比の経済状況は好転しているようだが、それでも国民の半数に相当する4千万〜4500万人もの人々が貧困ライン以下、もしくは同ラインぎりぎりの生活を強いられている。
電力供給が不安定な状況では、これら国民がシンガポール人や欧米人のような生活を送れるようになるまで半世紀はかかるだろう。「半世紀」は、政権転覆や大災害が起きなかった場合であって、これらが起きれば生活向上はさらに遅れる。
約10年前、「今後は、アジアが世界の経済発展をリードする時代になる」と言われた。確かに、中国とインドは目覚ましい発展を遂げ、日本は少子高齢化という問題を抱えながらも経済大国としての地位を維持している。韓国も日本と並ぶ世界のリーダーとなった。東南アジア諸国連合(ASEAN)域内では、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムが台頭し、比を追い越してしまった。
これら先を走る国々に追いつき、追い越すには何をすべきなのか。コールセンターやアウトソーシング、海外出稼ぎ者に依存しているようでは、追いつくこともままならない。やるべきは、農業の復興や製鉄などの工業振興、他国に劣らない観光産業の確立、教育制度改善による科学者・技術者育成、そして原発のようにクリーンで安定的かつ安価な電源開発だ。
これらを実行して国力を上げない限り、欧米や日韓、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムと同じ場には立てない。(5日・タイムズ)