ハロハロ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ……宮澤賢治の「雨ニモマケズ」からの一節だが、夏到来の三月、フィリピンでは高校を卒業した子を持つ親はおろおろしている。夏到来の暑さにうだっている余裕がないのは、子供に大学に進学したいと言われて学費を出せない人が多いからだ。この国も学歴社会で、苦学して成功者になった例は少なくなく、それだけに優秀な子にはどうしても大学に行かせたい。
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シングルマザー、Aさんは「娘は日本人の血を受けて頭がいい。本人は進学したいと訴えるけど月収一万ペソ以下ではとても無理」と顔色がさえない。角帽をかぶったかわいい少女の写真を見せて、「高校の卒業式では優秀生徒としてメダルをもらった」と自慢する。学費の当てはないが受験させ、受かったらカシノの臨時従業員でアルバイトさせることにしたという。
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同じシングルマザーのBさんも娘が日系。希望進学先は超一流の私立大学だ。弁護士になってお母さんを助けてあげるといわれて、「うれしいけど大変」と泣き笑い。考えた末、長年の勤め先をやめて、給料の高いところに移ることにした。夜間修学でMBA(経営学修士)の資格を取ったので大学院で就職をあっ旋してくれることになったという。「今の会社に未練はあるけど」とけなげだ。二つのケースとも日本の父親は頼りにならないらしい。(水)