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3月10日のまにら新聞から

戒厳令発令の誘惑

[ 727字|2008.3.10|社会 (society)|新聞論調 ]

逆風で苦悩の大統領

 権力維持に懸命なアロヨ大統領が、戒厳令を発令する可能性がある︱︱現政権内の情報源がこのほど、物騒な「極秘」情報をささやきかけてきた。「戒厳令の発令だけは何としても阻止したい」が情報提供の意図としているが、別の考え方をすれば、同情報を流布することで、大統領即時辞任を求めている勢力に恐怖心を与え、同要求運動を減速させる効果もある。つまり、戒厳令が発令されれば、アロヨ大統領に批判的なジャーナリスト、野党勢力メンバーらを逮捕することが可能になるからだ。

 しかし、現状は権力側が期待するほど、そう甘くはない。マルコス元大統領の専制政治時代でもそうだったが、戒厳令が必ずしも「恐怖の的」にはならないからだ。逆に、戒厳令で拘束された者たちは新たに誕生した政権が実施した選挙で、逮捕を「勲章」として誇示して国会議員に当選したり、閣僚ポストを手にした例があった。政界入りを狙う者たちにとって、戒厳令の発令はかえって有難いことなのだ。

 それでも、下院議席数での優位を過信したアロヨ大統領が、戒厳令発令を決意する可能性も考えられる。だが、そうなれば反アロヨ旋風が一層強まるのは確実で、自ら墓穴を掘るようなものだ。現状下、アロヨ大統領が選択できる最良の「花道」は自らの意思で身を引くこと。ウォーターゲート事件でのニクソン元米大統領の辞任例を持ち出すまでもなく、辞任したとしても、将来、名誉を回復できる機会はめぐってくる。辞任を恐れる必要はない。辞任は不名誉なことでもない。不名誉なのは国民から完全に見放されているのに、いつまでも権力にしがみついていることだ。アロヨ大統領にとって今が正念場だ。(5日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)

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