大統領への従属
最高裁の和解案
政府高官の口封じに使われていた大統領令四六四号が廃止されたとはいえ、これで高官の発言が自由になることは全くない。アロヨ大統領はその特権を乱用することで、政府高官たちの口を封じ込め続けることができるからだ。
同令廃止に伴い、政府高官は同令を盾に上院聴聞会を欠席することはできなくなった。しかし、これまでの記録を精査すると、欠席理由に大統領令を挙げた高官は、国軍関係者を除き、誰一人としていない。高官たちが将来、上院聴聞会に出席したとしても、肝心の質問に対しては、大統領特権を理由に回答拒否の姿勢を続けるだろう。
上院が聴聞会への召喚と、出席拒否者の拘束を合法としているのと同様に、大統領特権の存在も合法であり、廃止は不可能だ。しかし、アロヨ政権下における大統領特権は行き過ぎで、これを利用して政府の汚職を隠ぺいしていることは否定できない。
そうだからこそ国民は、ネリ高等教育委員長に対する上院の質問権を制限する最高裁和解案が大統領の意向に添ったもので、最高裁が大統領の力に屈して上院による同委員長への逮捕状執行仮差し止めを解除できないでいるとみている。行政機関と一線を画すべき最高裁が、大統領の汚職隠しに力を貸しているとは何とも皮肉だ。
ネリ委員長への拘束権が制限され、大統領特権で証言を拒否できる現状下、上院が同委員長を召喚できるとしても何の意味もない。質問への回答を拒否されては、上院は何もできず、醜態をさらすだけ。最高裁和解案は、大統領の汚職隠ぺい工作への加担と、最高裁の大統領特権への従属を意味している。(7日・トリビューン、ニネス・オリバレス氏)