「蜃気楼」と化す統一選
失態続きの中央選管
五月の統一選における中央選管の「失態」ぶりは目に余る。暴力、混乱、不正行為は改善するどころか、かえってひどくなり、国民はそのうち、選挙が実際には実施されながらも、それを実感できず「蜃気楼(しんきろう)」と錯覚、不信感を次第に深めていくことだろう。
選挙不信は国家の崩壊につながる危機だ。その最悪の例がミンダナオ地方マギンダナオ州で今も続く集票作業をめぐる混乱だ。二〇〇四年に実施された前回の大統領選ではガルシリアノ前中央選管委員が悪名をはせた。集計作業中の同年五月二十九日に録音された通話内容から「ハロー・ガルシー」の流行語を生んだ同疑惑だったが、結局、アロヨ大統領の当選をめぐる疑惑は解明への確証に欠け、うやむや状態のままでしぼんでしまった。
その記憶も消えない中、今回の統一選で「問題児」となったのが同州選管のベドル委員長。こともあろうに同委員長の名前が「ハロー・ガルシー」の通話記録中にも出ていた。同名が出てきたからといって、今回の疑惑行為加担の証拠とはならないだろうが、同委員長にはこうした疑惑加担への「前科」があり、今回の同州での不正疑惑も起こるべくして起きた感が拭えない。
とはいえ、今回の混乱状況の中で、わずかな「光明」を得たのも事実。民主政治を守り、公正な選挙実施を願うボランティアたちが勇気ある声を上げたことに加え、有権者たちの間にも学習効果が表れ、魔術師のトリックのように集票作業を巧妙にごまかすマギンダナオ州でのようなケースが全国に拡大するのを多少でも防げたからだ。(6月24日インクワイアラー、ランディ・ダビッド氏)