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11月6日のまにら新聞から

無策の犠牲者は誰か

[ 686字|2006.11.6|社会 (society)|新聞論調 ]

人口1億人時代

 フィリピンの人口は二〇一〇|一二年に一億を突破し、人口の多さで世界十三位になると予想される。人口増を抑制する国策が存在せず、増加率が年率二%を超える中、一〇年までに一億を超える可能性すらある。

 人口急増の最大要因は、人口政策をカトリック教会に牛耳らせる政府の姿勢にある。言うまでもなく、教会は人工避妊に反対し、比人の大部分は「天罰」を恐れるあまり教会の指導に従おうとする。

 歴代大統領で、教会と一線を画して人工避妊を奨励したのはプロテスタントのラモス元大統領一人だけ。同元大統領の後継者らは、選挙で「教会票」を失うのを恐れるあまり、人口対策に背を向け、火の粉がわが身に降りかからないよう抑制策を地方自治体任せにしてきた。

 楽観的な宗教界指導者や学者らは「比は一億人を養える。生活の質や環境への影響もない」と言う。十億人を超える人口を抱える中国やインドを引き合いに出して「人口問題は経済成長により克服可能だ」とも主張する。

 これに対して、悲観主義者は「現状でも水や食料など天然資源の供給はひっ迫している。公共サービスが維持されるかどうかも疑問だ。比の国際競争力や指導者のビジョンはアジアの巨人らと比較しようもない」と反論、人口増に歯止めをかけるよう警鐘を鳴らす。

 比の人口は現在、約八千五百二十三万七千人で、その三分の一以上が貧困ライン以下の生活を強いられている。数年以内に到来する人口一億人時代を前に、われわれは「失業増や水・電力不足、環境破壊の深刻化が進む中、果たして生活の質は犠牲にならないのか」と自問しなければならない。 (10月31日、タイムズ)

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