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9月25日のまにら新聞から

踏みにじられた民主主義

[ 674字|2006.9.25|社会 (society)|新聞論調 ]

タイ・クーデターの教訓

 タイの首都バンコクでは数週間も前からささやかれていたうわさが現実となった。十九日、タイ国軍部隊が官庁を取り囲み、ソンティ陸軍司令官が首相の権威を奪取し、現行憲法を停止、戒厳令を敷いた。

 フィリピン人には過去の戒厳令を思い起こさせるものとなったであろう。ラジオやテレビ放送の中止、流れるプロパガンダ、政府高官の逮捕、騒々しく通りを動く戦車や兵隊︱︱。タイからのニュースは奇妙に親しみのあるものだった。

 失脚したタクシン前首相には、政府内での汚職疑惑のほかインサイダー取引の疑いがあった。タイ南部では民族紛争が起こっており、中流階級はメディアなど中立機関への介入と弱体化をもらたした前首相に怒りをぶつけていた。

 タイの主要野党陣営は反政府集会を予定していたが、軍の行動で集会は開けなくなった。タクシン前首相を批判してきた市民はいま、同じ船に乗っている。そして、前首相をこれまで追い詰めてきた民主派勢力は、自問自答する。「タクシンは消えた、しかしこれが望んでいた結果なのだろうか」と。

 フィリピンは今年二月、国家指導者と国軍など公的機関に対し国民の怒りが爆発、タイの現状と極めて近い状況にまで追いやられた。しかし、われわれの国軍はタイ国軍に比べ、団結力にも規律にも欠けていた。タイ国軍が政治に介入したのは絶対君主制から立憲君主制への移行を目指した一九三二年クーデターが最初で、今回は十七回目。

 しかし、極端な手段は一時の治療薬にしかなり得ない。政治の場面で正当性と安定性を目指すには選挙という手段が最も有効なのだ。(20日・インクワイアラー)

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