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11月28日のまにら新聞から

問題を直視せよ

[ 688字|2005.11.28|社会 (society)|新聞論調 ]

医師の海外流出問題

 加速する医療従事者の海外流出をどう解決するのか。この課題へのサントトマス労働雇用長官の対応は「問題に目をつぶる」ことらしい。

 医療従事者連盟のエベサテ事務局長やガルベス元厚生長官が深刻な人材流出に対し相次いで危機感を表明した。しかし、サントトマス長官は彼らの指摘を根拠のないものだと退けた。医師歴二十五年の男性外科医は四十人の同窓生のうち三分の一以上が海外移住したと語った。女性産婦人科医も一九九八年に共に卒業した三百人の婦人科専攻生のうち半数以上が海外で働いていると明かした。しかし、同長官にとってはこのような事実も問題ではないようだ。一体どんな事態に陥れば彼女は深刻に考えるようになるのだろうか。

 フィリピン大学のデータによると、二〇〇一︱〇四年までに三千人の医師が看護師として働くため国外に出た。世界保健機関が算出した人口一万人当たりの理想的な医師数と比のそれを比較すると医師の数は二分の一以下である。

 もしこの厳然たるデータを同長官が問題視しないのなら、このような事態がわが国の医療システムに与えている影響を考えるべきだ。私立病院協会によると、過去五年間で人材の海外流出で一千の私立病院が閉鎖され、現在運営されている病院は七百にすぎない。

 同長官は、すべての事実に抵抗し、問題を直視することを回避している。彼女が重視しているのは、国の優秀な人材が失われることでなく、海外就労者によるドル建て送金だけなのだ。国が生き抜くためには海外からの送金に依存することが重要で、国民が医療従事者の不足によって命を落とすことは問題ではないようだ。(24日・インクワイアラー)

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