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4月11日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 516字|2005.4.11|社会 (society)|ハロハロ ]

 毎朝、人なつこい微笑でコンドのドアーを開けてくれたベルボーイが消えた。その夜、帰宅して彼の仲間を捜したがいない。いつの間にか雑用係りの全員が新顔に交代していた。行きつけのレストランのウエートレスが半年ほどたつと、新しい子たちに代わった。なじみのない顔とおぼつかない日本語では、日ごろうまいと思っている料理もどこか味けない。

     ◇

 もの知りの友人に聞くと笑われた。半年間以上、継続雇用すると最低賃金制が適用される。その寸前に解雇して、新しい試用従業員に切り換える。そうやって安く使うのだそうだ。若い失業者、半失業者があふれているから、交代はすぐみつかる。首都圏の最低賃金は目下、一日三百ペソだ。地方へ行けばもっと安い。しかし、この逆回転ドアー方式なら一日二百ペソも払えばいい。

     ◇

 最低賃金制は働く人々の最低限の生活を保障する趣旨だ。現実は、賃金を安く抑える道具になっている。華人系企業が編み出した手法だそうだが、日系企業でも採用しているという。安くて良質の労働力を売り物に外資誘致で急成長する中国が隣にいる。最賃制の網をくぐるなど時代の必要悪という反論もあるかもしれない。こうして人の心はすさんでいく。(水)

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