ハロハロ
七月二十三日午後、マニラ市ディビソリア地区で八階建て商業ビルが自壊した。築五年の新しい建物だけに前代未聞の出来事と言える。入居者らが異常に気付いてから、五時間以上経て倒壊したのが不幸中の幸い。けが人はなかった。だが、この国の建築基準の順守実態や高層ビルの耐震性の点検には絶好の機会となったはずだ。
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フィリピンに住みついて間もなくのころ、ビルの耐久度鑑定の専門家を自称する邦人建設業者と出会った。深刻な表情で「ここで高層ビルに住むのはやめなさい」と警告された。確かに、日本のような鉄筋・鉄骨建てビルの建設現場に出くわしたことがない。束ねた鉄筋をコンクリートで固めて柱とし、階を積み上げているだけに見える新築ビルが多い。素人目にも「危うさ」が察知できる。
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それにしても自壊したビルの基礎工事はどうなっていたのか。マニラ市当局が直ちに組織したという調査班は原因を究明できたのか。マニラの高層ビルの何割が強い地震に耐えられるのか。残念ながら、地元メディアにこれを追及しようとする姿勢はない。日本で記者になった時に幾度も聞かされた「社会の木鐸(ぼくたく)」という言葉の重みを痛感する。(康)