基礎教育の復活を
悪化する教育制度
フィリピンの教育制度は過去半世紀の間、悪化してきた。特に最近の三十年間に悪化の度合いが加速し、終末期に近づいてきていると考えている人も多い。財源を削られ、やる気を失い、時には汚職にまみれたこの国の教育制度は、競争原理に基づくグローバル経済を生き抜くのに必要な知性を備えた学生を創り出すことが不可能になりつつある。公立学校が悪化しているのであれば、私立の学校もしかりである。
今日の高齢者らが学生だった時には、教師は地域でも尊敬を受けた存在だった。そして当時の教育は「スリー・アール」を学ぶ場と呼ばれた。つまり「リーディング(読み)」、「ライティング(書き)」、「(ア)リスメティック(算数)」が中心だった。
われわれの教育制度が危機に陥り始めたのは、教育者たちが自分たちの使命をイデオロギーを通して検討し始めた一九六〇年代にさかのぼる。小学一年と二年の科目から理科の時間が削られ、その代わりに歴史でも地理でもない、寄せ集めの教科である「マカバヤン(愛国精神)」が導入されたのである。われわれは愛国心や英雄に対する尊敬の念を学ぶことはやぶさかでない。しかし今も昔も求められているのは若者にまず学問の基礎を教えることである。
今の学生は自分の考えを英語であれ、フィリピノ語であれ、適切に表現することができない。中途半端な教育を受けた学生が増えるのみだ。政治家は「忠誠の誓い」の表現や国旗の色の変更をめぐる議論に時間を費やしているだけである。低学力の子供に一年間の復習教室を設けるような一時しのぎな手段にも問題ありだ。われわれは基礎教育を復活させるべきである。(30日・インクワイアラー)