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5月17日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 515字|2004.5.17|社会 (society)|ハロハロ ]

 雨季の到来を予感してか、ルソンの木々は次々と咲き急ぐ。到るところ画家のパレットが地面に落ちて絵具が飛び散ったようだ。PAL便で着いたニノイ・アキノ空港の到着口は装いを改め、火炎樹の赤が白い建物に映えていた。マカティの街角ではゴールデンシャワーが揺れた。イースターの終わりを告げる黄色のカーテンだ。ベルエア・ビレッジを車で通り抜けると、ジェードヴァインがヒスイ色の花房を垂らす。新聞社まで日盛りを歩くと、薄紫のブーゲンビリアが列をなして案内してくれた。

 最近、フィリピン人を父に、日本人を母にして生まれた孫娘に「茉莉」という名を付けた。洗礼名がマリアだったので森鴎外の漢字感覚を借りた。マニラに来て「茉莉」がフィリピンの国花サンバギータを意味することがわかった。茉莉花とは中国語でジャスミンのこととわかっていたが、タガログ語でサンバギータだったとは。

 暮れなずむアヤラ・アベニューはすさまじい交通渋滞だ。動きのとれない車の窓に白い鎖が揺れた。貧しいみなりの娘がサンバギータの花輪を買ってくれと目ですがる。一瞬、赤ん坊の顔が頭をかすめた。孫がこの娘の年齢になるころ、サンバギータは悲しい香を捨てているだろうか。 (水)

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