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12月11日のまにら新聞から

援助パソコン盗難

[ 1834字|2003.12.11|社会 (society)|援助パソコン盗難 ]

窃盗団の影に不安訴える学校関係者。「安眠できず」「パソコン返したい」とも

窃盗団が侵入の際に乗り越えた塀を指差すパガン校長

 日本政府の無償援助(総額六億ペソ)でフィリピン全国の公立高校に贈られたパソコン・セットの連続窃盗事件。校内で最も高価な備品(一セット約六十万ペソ)を狙われた学校関係者からは「周辺校が襲われ、次はわが校かと思うと安眠できなかった」「パソコン類が校内にある限り心配だ。できれば引き取ってもらいたい」など不安を訴える声が上がっている。また、安全対策でも、事業を実施した貿易産業、教育両省と学校現場が責任を転嫁し合い、効果的な対策を取れない状態が続いている。 (酒井善彦)

 パンパンガ州サンルイス町のサンカルロス高校(カリト・マンダプ校長、生徒数千十二人)は十一月二十八日に被害に遭った。第一発見者は同日午前六時すぎ学校へやって来たマンダプ校長(44)。パソコン教育用教室の窓が割られ、ねじ曲げた鉄格子のすき間からパソコン本体二十台が持ち去られていた。

 マンダプ校長は他校の校長らからパソコン盗難が相次いでいることを聞かされ、パソコン教室のドアに頑丈な鉄格子と鍵三個を取り付けていた。「次は自分の学校かと思うと夜もゆっくり眠れなかった。地元住民に校内で寝泊まりしてもらっていたが、事件当日はたまたま誰もいなかった」と話す。

 現在、パソコン教室にはモニター二十台と周辺機器だけが放置されている。複数回襲われたケースがあることを知った同校長は事件後、「また襲われるかもしれない。校内にパソコン機器がある限り不安だ」と貿易産業省側にモニターなどの引き取りを依頼したが、「パソコン類はもう学校の備品。学校側で管理してほしい」と断られてしまった。窃盗団再来におびえる日々は現在も続いている。

 また、同州メキシコ町のアナオ高校(ドミンゴ・パガン校長、生徒数約千百五十人)は〇二年六月と〇三年八月の二回、窃盗団に侵入され、パソコン本体二十台やモニター五台などを盗まれた。一回目の事件後、木製の壁をコンクリートで塗り固めるなど対策を取っていたにもかかわらず、鍵をねじ切られて再度侵入を許した。

 校長室にあった個人用パソコンも一緒に盗まれたパガン校長(50)は「貿易産業省や教育省は警備員を雇えと言うが、学校にそんな予算はない。鍵や鉄格子をいくら付けてもやられる。次にパソコンをくれるなら安価な中古がいい。新品なら警備員も一緒に付けてほしい」と訴える。

 同校では〇二年六月から援助パソコン二十台を使った授業を開始。一回目の事件でパソコン本体十二台が盗まれた後も、父母からの寄付などで中古パソコン五台(総額五万ペソ)を買い足して何とか授業を続けてきた。しかし、二回目の事件で残りの援助パソコン八台が盗まれてしまい、既に四カ月間授業は中断したままだ。

 事件続発を受け、貿易産業省は〇三年八月、国家警察や教育省関係者、援助対象校の校長らを集めて対策を協議、・関係者間の連絡、情報交換を密にする・警備員を雇うなど学校の警備を強化する・地元住民組織に見回りを依頼する・・などを申し合わせた。

 しかし、警備強化に必要な予算措置について、関係省庁の姿勢は「パソコン類は既に学校の管理下にある。教育省が安全確保の責任を負うべき」(貿易産業省)、「各校に警備員を配置する予算は省にはない」(教育省)と消極的。窃盗団も逮捕されず、両省のはざまに置かれた学校現場の不安は高まるばかりだ。

 このような状況下、貿易産業省などは〇四年から「公立学校のためのパソコン・プロジェクト」の第二弾に着手する。〇五年までの二年間で、新品のパソコン・セット一万一千組を全国の公立高校千百校に新たに支給する計画だ。総事業費は五億八千四百万ペソ。第一弾と同様、日本政府の無償援助が充てられる。

 公立学校のためのパソコン・プロジェクト 第一期では〇一年一月から〇二年六月にかけ、全国約一千校の公立高校に新品のパソコン・セット二万組が支給された。第二期は〇四・〇五年にパソコン・セット一万一千組を公立高校千百校に贈る計画。一・二期の総事業費は十一億八千四百万ペソ。全額が日本政府の無償援助(ノンプロジェクト方式)。情報技術(IT)教育の推進が目的で、公立高校(約四千六百校)のパソコン配備率は事業実施前の三一%から七三%(第二期終了後)に跳ね上がる予定。

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