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2月3日のまにら新聞から

和平推進は政治的演出

[ 701字|2003.2.3|社会 (society)|新聞論調 ]

政府のNPA政策

 フィリピン共産党(CPP)の軍事部門、新人民軍(NPA)の元総司令官ロムロ・キンタナールの暗殺事件は、NPAを表舞台に帰り咲かせたかのようだ。彼らは閣僚メンバーを暗殺対象者リストに載せた。それは農山村部だけでなく、一九七〇年代のように政財界の要人を標的とし、都市部に活動を広げる戦術を再び採用するとのシグナルである。

 これに対し、政府の対応はどうか。実際、アロヨ政権は何ら適切に対処できていない。単に、和平合意のための草案を先方に提示しただけである。マラカニアンの人々の頭の中を占めているのは、二〇〇一年六月にNPAがロドルフォ・アギナルド下院議員を射殺して以来中断されてきた和平交渉再開を演出することで、何らかの得点を稼ぐことでしかない。元総司令官の暗殺は政治的に利用されつつあるに過ぎない。 

 一方、NPA側は国軍や政府施設、企業への攻撃を強めているが、テロを止められないアロヨ政権はCPPの最高指導者、シソン氏の思惑通りに弱体化している。大規模なテロがさらに起これば崩壊の危機に直面するだろう。同氏の見通しによれば、現政権が〇四年の大統領選に伴う任期満了前に失策が原因で存続不能となるのは確実という。

 共産党ゲリラへの対処方法については、第二次世界大戦以来の試行錯誤から学んだ蓄積がある。このうち最も大切なのが、ゲリラが追い込まれた状態にある時は交渉を避けることである。切羽詰まれば、ゲリラは自ら和平を求めてくる。これを待つことがこれまでのさまざまな教訓を生かすことになる。

 シソン氏の真の狙いは、交渉を通じて自身が政府と権力を分かち合うことにあるのかも知れない。(1月27日・マラヤ)

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