ロペス記念博物館
フィリピン文化の宝庫
近代的な高層ビルがそそり立つ商業地域のパシッグ市オルティガス地区。ひときわ目立つフィリピン証券取引所ビルの隣にある小さな白いビル、ベンプレスビルの一階にロペス記念博物館がある。ここにはフィリピン屈指の財閥が三代かけて収集した六百年にわたる自国の貴重な文化遺産を収蔵しており、訪れる人々に時間を越えた文化の息吹を伝えてくれる。
パナイ島に起源を持つロペス一族は、マニラ電力やテレビ放送局のABS-CBN(チャンネル2)、マニラ水道会社など国内有数の企業を所有する財閥として知られている。
しかし、一族は地図や絵画、陶磁器、希少本や新聞などのコレクターでもあり、特に戦前・戦中・戦後とロペス財閥を率いたユーヘニオ・ロペス・シニアはそのコレクションの充実に心血を注いだ。彼は一九六〇年にそれまで自宅に収蔵していた収集品を基にロペス記念博物館を開館、一般に開放した。
その時、人々の目を奪ったのは、一九世紀に活躍したフィリピン絵画の巨匠、フェリックス・ヒダルゴとフアン・ルナのスケッチを含む豊富な絵画コレクション、そしてフィリピンの英雄ホセ・リサールの直筆書簡や彼のスペイン語小説の初版本、さらに一五〇七年のドイツ製のアジア地図をはじめとする貴重なフィリピンに関する地図コレクションだった。
その後もコレクションは増え続け、現在、百八十余りの絵画と一万六千点のフィリピン関連書籍の他に、マルコス期に廃刊に追い込まれたマニラタイムズやマニラクロニクルなど英字紙の新聞コレクションなどがあり、研究者の間で高く評価されている。
マニラのメトロポリタンミュージアムで学芸員を勤め、英国留学を経て九四年から館長を務めるマリレス・マティアスさんは「歴史家のレナート・コンスタンティーノさんにお願いして有名な絵画『スペインとフィリピン』も購入した。フィリピンの文化と歴史を紹介できる絶好のコレクションと自負しています」と語っている。
同記念博物館では最近、国内の現代芸術を紹介するコーナーが作られている。現在、バギオ市や海外のチベットなどで活躍する新進アーティスト、カワヤン・デ・ギアの「地から空へ」というインスタレーションと写真、絵で構成されたミニ展覧会が四月二十一日まで開かれている。
開館時間は平日午前8時︱午後5時。土曜日は午前7時半︱午後4時問い合わせは631・2417まで。(澤田公伸)