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7月31日のまにら新聞から

具体性欠くかじ取り

[ 581字|2000.7.31|社会 (society)|新聞論調 ]

大統領の施政方針演説

 就任三年目のエストラダ大統領は二十四日、施政方針演説を行い、現在の状況を「新しい始まり」と例えた。過去二年間は「課題が何かを学び、それを乗り越えるために闘ってきた」としている。しかし彼の計画している「新しい始まり」は期待できるものとはおもわれない。

 施政方針演説では「過去にこだわらず未来を共に形成しよう」とあるが、大統領自身は過去に執着している。イスラム急進派、モロ・イスラム民族解放戦線(MILF)のミンダナオ島での拠点拡大など勢力の浸透を許したとしてラモス前政権を批判しているからだ。

 また、いい面ばかり強調するくせも変わっていない。例えば、今年第二・四半期における農業生産の成長率は四・八%を記録したと紹介しているが、アジア通貨危機の影響からの回復が遅れていることは無視した。インフレ率抑制には触れても、失業率には触れていない。好調な輸出や外貨準備高の伸びについては話題に上げたが、二週間ほど前に記録した過去二年間で最安値のペソの対ドルレートについては話題にしなかった。

 「新しい始まり」を約束するのであれば、国の未来に向けた新しい方針を提示すべきである。しかし、「ミンダナオ島を国内の食糧基地にする」や「縁故主義をなくす」などは旧来の公約が復活したものに過ぎない。国民に平和や繁栄をもたらすためにはまったく具体性を欠いた施政方針演説と言えよう。

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