スカボロー近海で実弾演習 中国の「モンスター船」けん制か
比海軍が中国に実効支配を奪われているスカボロー礁近海で実弾演習を実施
フィリピン海軍は17日、サンバレス州西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)近海で、ミサイルフリゲート艦「BRPアントニオルナ」(107メートル)など海軍主力艦による「主権哨戒」と実弾演習を実施したと発表した。以前フィリピンが実効支配していた同礁は、中国が2012年に占拠。昨年10月には中国が一方的に領海基線設定を宣言した。さらに今月4日からは、「モンスター」の異名で呼ばれる中国海警局の世界最大級巡視船「海警5901」(165メートル)が、同礁よりさらに比本土に近いサンバレス州沖60~70カイリに展開し続ける。そんな中で、比側がけん制行動を一段階強めた格好だ。
BRPアントニオルナのほかに海軍が今回投入したのは、米沿岸警備隊のハミルトン級カッターを哨戒艦に転用した「BRPラモンアルカラス」(115メートル)と「BRPアンドレスボニファシオ」(同)。比海軍は同演習を「定期演習であり、海軍職員の技能維持、向上が狙い」としている。
比沿岸警備隊(PCG)は「モンスター船を追い払うため」にPCG最大船の97メートル級巡視船「BRPテレサマグバヌア」(日本供給)や83メートル級「BRPガブリエラシラン」(フランス供給)を派遣したが、モンスター船は展開を継続。BRPテレサマグバヌアは15日までに帰投した。PCGのタリエラ報道官は16日夜、「BRPガブリエラシランが無線警告を通じモンスター船をサンバレス沖から70カイリの位置にとどまらせることに成功した」と発表したが、「追い払う」ことには成功していない。
今回派遣された比海軍艦は主砲に76ミリ砲をそれぞれ1門ずつ備える。一方、「第2海軍」と言われる海警局の最大船「海警5901」は同じ76ミリ砲を2門備え、満載排水量はBRPアントニオルナの4・6倍に及ぶ。
中国はモンスター船の派遣について、「自国の海域の法執行任務および巡視を行っており、非難を受ける余地はない」と主張している。(竹下友章)