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1月16日のまにら新聞から

比日米協力の強化で一致 トランプ次期政権に備え

[ 1274字|2025.1.16|政治 (politics) ]

比日外相会談が開かれる。両外相は比日米協力をトランプ新政権下でも継続・強化するよう取り組むことで合意

外相会談後に会見を開いたマナロ外相(右)と岩屋外相(左)=15日午後1時過ぎ、首都圏タギッグ市シャングリラホテルで竹下友章撮影

 マナロ外相と岩屋毅外相は15日、首都圏タギッグ市で会談した。会談後の記者会見で岩屋氏は、中国の海洋進出について「南シナ海で地域の緊張を高める行為が繰り返されている」として「深刻な懸念」を表明。「南シナ海を巡る問題は地域の平和と安定に直結する国際社会の正当な関心事項だ」とし、政府安全保障能力強化支援(OSA)および政府開発援助(ODA)を通じた海洋安全保障・海上保安分野の協力の推進を含め、比日連携を一層強化することで一致したと報告した。また両外相は、地域の平和と安定のために米国を始めとする同志国間連携を推進する必要があるとの認識を確認。「比日米3カ国協力のモメンタム(勢い)を維持・強化するために、米国のトランプ次期政権と意思疎通を続けることでも一致した」と発表した。

 今月20日に迫るトランプ次期大統領の就任式に出席予定の岩屋氏は、「米国によるこの地域への建設的な関与が、米国自身にとっても重要だという観点からも、米次期政権と意思疎通を図っていきたい」と説明。マナロ氏は「両国ともに同志国との連携を強める必要があると認識しており、比日米連携を追求するという強いコミットメントを確認した。今後も機会があるごとに3カ国協議を実施したい」と述べた。 

 昨年4月の比日米首脳会談で立ち上げられた3カ国協力を巡っては、バイデン米大統領が13日主催した比日米首脳電話会談でも継続が確認された。それを踏まえ今回の比日外相会談では、東南アジアへの関与を弱める可能性が指摘されるトランプ次期政権に対し、比日が足並みをそろえて3カ国協力路線への引き止めに取り組むことを申し合わせた格好だ。

 マナロ氏は「地域の地政学的状況は一層厳しさを増し、複雑化しているとの認識を共有した」と報告。「日本との戦略的関係の強化は、比の国家安全保障と地域の平和・安定の両方に極めて重要な役割を果たす。この文脈で部隊間協力円滑化協定(RAA)に署名した」と述べた。同志国間連携の拡大の見通しについては、「両国とも同志国間連携を拡大する方針であり、オーストラリアをはじめとした地域の同志国との協力を推進したい。わが国が関与する連携活動は全て包摂的な形で行っており、法の支配や自由で開かれたインド太平洋のビジョンを共有する国であるなら常に歓迎する」とした。

 

 ▽JPEPA見直しも

 一方、経済分野について、マナロ氏は日本との貿易・投資の強化に比政府が強力に取り組む意向を伝達。さらに、「早期に日比経済連携協定(JPEPA)の全般的な見直しを提案した」と発表した。

 日本側は情報通信技術(ICT)、経済強靭(きょうじん)化、デリスキング(地政学的要因による経済リスクの低減)などの協力の深化を提言。そのほか、両者はダバオ市バイパス道路、治水事業、気候変動緩和策などの協力を進めることで一致した。

 両者は今年なるべく早く外務次官級の戦略対話を開催することで合意。2国間メカニズムを通じ、様々な事業の実施について両政府の関与を深めることで一致した。(竹下友章)

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