「補給協力の準備ある」 南シナ海問題で米司令官
米インド太平洋軍司令官が「米国は比の南シナ海補給任務を手伝う準備がある」と明言
フィリピンと米国の両軍は29日、ルソン地方バギオ市で相互防衛の強化の具体的な道筋を議論する相互防衛委員会・安全保障関与委員会の年次会合を開いた。会合後の記者会見で米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は、「武力攻撃」未満の範囲で中国による「力の行使」が多発してきた南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)への比軍の補給任務について、「米国は補給を支援する準備ができている」と繰り返し明言した。
中国は、南シナ海問題を「米国が比での軍事プレゼンスを高める手段として利用している」と何度もけん制している。7月のアユギン礁における比中間の緊張緩和合意後もパタナグ礁(英名スカボロー礁)、エスコダ礁(国際名サビナ礁)などで中国による船舶体当たりやフレア(発光弾)発射などが相次いでおり、南シナ海問題が米中間対立の色合いを強めそうだ。
▽「死にそうになった時」
比国軍のブラウナー参謀総長は会見後、記者団に対し、比側が米国に補給任務への支援を求めるタイミングについて、「配置された兵士が物資補給の妨害により餓え、死にそうになっているときが米国に支援を求めるときだ」と説明。最後の手段として比米合同補給任務に踏み込む条件を明らかにした。
その一方で、「軍にはまだ多くの選択肢がある」と説明。「国軍は補給任務を安全に成功させる能力があり、さらに、比沿岸警備隊(PCG)、漁業水産資源局(BFAR)」とも連携し、国全体で取り組んでいる」と述べ、当面は比だけで対応する考えを示した。
比は1999年、アユギン礁に旧式揚陸艦を座礁させて海軍職員を配置、実効支配の拠点としているが、現政権になって中国による補給・職員交代任務への妨害が本格化し、6月には海軍の比硬質ボートが海警局職員に刃物でパンクさせられ、比職員がもみ合いの中で親指を欠損する事件が発生している。
一方、南シナ海補給任務の中継地点となっているエスコダ礁には中国による人工島造成の兆しが比側の調査で見つかり、4月からPCG最大の97メートル巡視船「BRPテレサマグバヌア」(日本供与)を長期停泊、監視を強化している。しかし26日にPCGによって実施された同船への物資補給任務は、中国海軍、海警局、海上民兵船からなる40隻の船団によって阻止されている。(竹下友章)