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7月29日のまにら新聞から

暫定合意下で初の補給 臨検の有無で対立も

[ 1089字|2024.7.29|政治 (politics) ]

比中の「暫定合意」に基づいた初のセカンドトーマス礁への補給任務を実施。中国は臨検実施と発表したが比は否定

 フィリピン政府は27日、今月比中外務省間で取り交わされた緊張緩和暫定合意の後、初めてとなる南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)への補給を実施したと発表した。比外務省は「不都合な事態はなかった」と報告。2023年来、同礁への補給のたびに中国による妨害が繰り返され、前回6月17日の補給では海警局が比海軍ボートに繰り返し衝突、刃物を振り下ろすなどの実力行使に及び、比職員数人が親指欠損などの重軽傷を負う事態にまで激化していたが、久しぶりに「平和的」な補給が実現した。

 中国外務省は、「中国側には事前通知され、海警局の監視のもと実施された」と発表。「現場で比船が人道・生活物資のみを運んでいることを確認した上で、同船を通過させた」と述べた。

 それに対し、比国家安全保障会議は28日に声明を発表。「比は補給に関し中国の許可を求めたことはないし、これからも求めない」と強調し、「中国外務省が主張したような比船が海警局から臨検を受けたという事実はない」とした。

 補給は民間船「MVラプラプ」と比沿岸警備隊の44メートル級巡視船「BRPケープエンガニョ」(日本供与)の2隻で実施。それに対し、中国は海警局船4隻、中国海艦艇3隻、中国海上民兵船2隻を投入した。

 補給品の食料・人道支援物資に限ることや、補給の事前通告、「1プラス1」船で補給を実施するという内容は、今年1月に中国大使館の駐在武官と補給任務担当の国軍西部司令本部の前司令官との間で取り交わしたという、「新モデル」の内容に似る。

 中国側が比メディアに公開した通話の書き起こしによると、「新モデル」では中国側も「1プラス1」船で監視するという内容だったとされ、それより多くの海上アセットを中国が投入した「暫定合意」は、「新モデル」より中国側に有利な内容であることも考えられる。

 比外務省は、中国側が「新モデル」の情報を公開した5月に、「外務省は比の管轄権、主権的権利を放棄するいかなる合意も結んだことはなく、政府の最高レベルの承認なしで合意が締結されることはない」と否定していた。

 1999年からアユギン礁に座礁させてあるBRPシエラマドレは現在激しく劣化し、修繕のための建設資材の搬入が行われなければ早晩倒壊を免れないとも指摘される。暫定合意に補給を食料・人道支援物資に限定するという内容が含まれ、それが継続的に履行されれば、中・長期的には比による同礁の実効支配の喪失に結びつく。

 マルコス政権には緊張緩和と長期的な海洋権益維持の両立という難題への対応がより強く求められそうだ。(竹下友章)

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