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8月1日のまにら新聞から

南シナ海問題で比を支持 訪問中の欧州委員長が表明

[ 1525字|2023.8.1|政治 (politics) ]

フォンデアライエン欧州委員長が大統領と会談。南シナ海問題で比支援を表明

マルコス大統領と握手するフォンデアライエン委員長(左)=7月31日(大統領府提供)

 欧州連合(EU)の「内閣」に当たり、EU組織で唯一法案提出権を持つ欧州委員会のトップ、ウルズラ・フォンデアライエン委員長が7月31日、大統領府を訪問しマルコス大統領と会談した。欧州委員長の比訪問は今回が初めて。共同記者会見で同委員長は「世界の『権威主義的リーダー達』は威圧に頼って行動している」と指摘し、その上で、中国による実効支配が拡大する南シナ海問題について、「情報の共有、脅威アセスメントの実施、比沿岸警備隊(PCG)の能力構築支援を通じて比を支援する」と表明。自由貿易協定(FTA)の交渉再開や経済支援パッケージも提示し、比重視の姿勢を打ち出した。

 同委員長は、中国の主張を全面的に退け、比の主権的権利と管轄権に関する主張の正当性を認めた2016年の南シナ海仲裁裁判所の判断にも言及。「紛争の平和的解決の基礎となっており、法的拘束力がある」と明言した。

 また、第2次安倍政権期に日本が提唱し、比を含め世界各国で採用されている「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」について、「脅威のないインド太平洋は平和と安定の鍵だ」と述べ、同ビジョンに従った協力を推進することを改めて表明した。EUは2021年にEU版FOIP「インド太平洋地域における協力のためのEU戦略」を採択している。

 6月30日に開かれた比・EU合同委員会会合で比とEUは「海洋威圧」に関する分科会を設置することを決定。また、駐比ドイツ大使は「比と合同軍事演習、海上保安協力、外交協力を含むパートナーシップを強化する必要がある」との見解を表明しており、同国は来年2隻の艦船を比に派遣する予定だ。フランスは同国の政府系造船企業ナバルグループを通じ比の潜水艦部隊創設への支援を表明してるほか、2025年までに仏原子力空母シャルル・ド・ゴールの比寄港を計画している。

 ▽FTA交渉再開

 経済協力に関してフォンデアライエン委員長は、中国やロシアによる経済的威圧を念頭に「欧州も東南アジアも(特定国へ)経済的に依存することのコストを学んだ。貿易先の多様化、『デリスキング』が供給網を強靭(きょうじん)にする」と地政学的リスクと経済の関連を強調。その上で、比EU間FTAの交渉を再開することで合意したことを明らかにした。「デリスキング(リスク低減)」は5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の共同声明で中国に対する先進国の対応として打ち出された言葉だ。

 比・EU間のFTA交渉はノイノイ・アキノ大統領期の2013年に予備交渉が開始されたが、ドゥテルテ前政権期、人権問題を背景としたEUとの関係悪化に伴い2017年を最後に中断していた。

 同委員長はまた、地球観測事業で比と協力し、比宇宙庁にEU衛星のデータミラーサイトを設置、情報を共有すると発表。「比がEU宇宙分野でアジア初の協力相手となる」とした。さらに、EUによる比のデジタル化インフラ支援パッケージを「今年中に発表する」と述べた。

 マルコス大統領は「民主主義、持続可能で包摂的な繁栄、法の支配、平和と安定、人権という価値観を比とEUは共有しており、志を同じくするパートナーだ」と指摘。その上で、EUが比のグリーン経済事業に対し6000万ユーロ(約37億ペソ)の支援を約束したことを明らかにした。同事業には、資源再利用を促進する「循環経済」への転換、気候変動の軽減への取り組み、再生可能エネルギー事業が含まれる。

 また、EUが船員資格証明書を比船員に対し引き続き発行すると決定したことに「EU諸国の船籍で働く5万人の比船員の雇用にいい影響をもたらした」と感謝の意を表明した。(竹下友章)

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