「数カ月以内に締結」 軍事情報協定で比米国防相
GSOMIAと比防衛力支援5カ年計画を数カ月以内に締結することで合意
比国防省はこのほど、テオドロ新国防相がオースティン米国防長官と初の電話会談を行ったことを公表した。両者は比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用施設の増設や初の比米防衛指針(ガイドライン)の策定を歓迎した上で、軍事機密情報を共有する際の前提となる「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)および米国が比の安全保障能力強化を支援する5カ年計画「防衛セクター支援ロードマップ」を数カ月以内に締結することで合意した。
比国軍は三菱電機製の最新鋭警戒管制レーダー4基を調達するなど情報収集能力を高めており、GSOMIAが締結されれば、台湾周辺の軍事関連情報の比米間共有も一層高度化するとみられる。
オースティン氏はまた、比米が日本や豪州など「自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有する同志国」と緊密に連携することの重要性を強調。両者は南シナ海での合同哨戒を実施することを改めて確認したほか、対面での会談を行うことで合意した。
▽中国の「威圧行動」
オースティン氏は先月末に比の排他的経済水域(EEZ)内のアユギン礁(英名セカンドトーマス礁)付近で中国海警局が海上民兵船とみられる船舶と共に比沿岸警備隊(PCG)の補給任務を妨害した事案を念頭に、「セカンドトーマス礁を含む南シナ海海域で安全かつ合法的に操業していたPCG船に対する中国船の威圧的で危険な行動」に対し「懸念をもって留意」した。
比政府は1999年同礁に海軍の旧式強襲揚陸艦「BRPシエラマドレ」を座礁させ海軍の詰め所とすることで実効支配を固めてきたが、近年中国は同礁海域への干渉を強めている。現在は、小型ボートによる補給のみを「人道的な理由」で中国監視のもと認める一方、補給船に同行したPCG船の環礁内への進入に対しては威嚇的な操船や進路の遮断により断念させており、同礁での比の実効支配は揺らいでいる。
またオースティン氏は、比米相互防衛条約が「『南シナ海の全ての海域を含む』太平洋における『比沿岸警備隊船艇』を含む公船、航空機、軍隊に及ぶ」との解釈を改めて明示した。
比米相互防衛条約には条約発動の条件を「どちらかの国の大都市、太平洋で管轄権を有する島しょ領土、太平洋で操業する軍隊、公船または航空機に対する武力攻撃」とだけ定めており、米国が公式声明で南シナ海が太平洋に入るとの解釈を示したのは2019年以降。沿岸警備隊船艇が公船に含まれると明言したのは今年に入ってからとなっている。(竹下友章)