マナロ外相は24日、首都圏マニラ市で開かれた海洋安保シンポジウムに出席した際、「フィリピンが東南アジア諸国(ASEAN)の議長国となる来年に、参加国すべてが南シナ海行動規範(COC)を締結することに合意している」と明らかにした。
複数の沿岸国が権益を主張する南シナ海問題を平和的に解決するため、2002年には南シナ海行動宣言(DOC)が採択されたが実効性に欠き、法的拘束力を持つCOCの締結が目指されてきたが、長らく交渉は停滞。しかし23年7月の中国ASEAN外相会議で協議のガイドラインが採択され、同年8月に比で開かれた合同委員会会合で議論が再開。今月には首都圏でCOC策定に関する作業部会が開かれた。
マナロ氏は「実質性と実効性を持って参加国の行動を規定する規範策定を目指すが、同時にわが国の優先事項と立場も主張したい」と決意を表明。これからの課題として、「規範の範囲、性質、DOCとの関連性を定める必要がある」とした。
一方、南シナ海問題で比中間の緊張状態が続く中、テオドロ国防相は昨年10月に「中国には交渉に必要な誠意がみられない」と批判。「これまでやってきたことの延長であれば、COC締結は難しいだろう」との見方を示している。
また、マルコス大統領は23年に訪米した際、マレーシアやベトナムなどの沿岸国との「COC」を中国抜きで進める意向を表明。マナロ外相は昨年8月、東南アジアの当事諸国と2国間で海洋に関する合意作りを同時並行に進めるというかたちで、中国以外の当事国での事実上の「COC」形成に取り組んでいることも明らかにしている。
フィリピン大のバトンバカル教授(国際海洋法専門)によると、沿岸国の海洋権益の主張領域は以前大きく重複していたが、2016年に中国の主張を全面的に退けた仲裁裁判所判断が出たことも受け、現在は中国を除いた沿岸国の主張はおおむね1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に沿ったものとなっているという。 (竹下友章)