日本は「不動のパートナー」 比大統領と岸田首相が会談
日本訪問中のマルコス大統領は経済関連行事、日本政府主催の公式行事などに参加
日本を公式訪問中のマルコス大統領は9日、午前中に経済関連行事をこなし、午後、首相官邸で岸田文雄首相と会談した。両首脳は経済や安全保障・国防面での関係強化で一致し、東・南シナ海で海洋進出を強める中国を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を確認した。
会談後、マルコス大統領と岸田首相が立ち会う中、人道支援・災害救援、インフラ整備、農業、デジタル分野などに関する7つの協定・覚書に署名。岸田首相は「われわれの共有する将来の方向性を示す、二国間関係の広がりと深まりを確認するもの」であり、「経済や安全保障を含む幅広い案件について、様々なレベルでの交流がより一層前進した」と称賛した。「日本は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するために、フィリピンや近隣の海洋国家、太平洋地域との協力を非常に重視している」と述べた。
マルコス大統領も「われわれは民主主義、人権の尊重、法の支配という共通の原則を共有している。日本は信頼できる友人であり、平和と進歩のための堅実かつ不動のパートナーだ」と述べた。また、今回の訪問は「われわれが今まで約70年近く培ってきた非常に深いレベルの友好関係の証だ」とした上で「岸田首相にもフィリピンを訪れてほしい」と訪比を要請する一幕もあった。
交換公文・融資契約が交わされた分野として、南北通勤鉄道(NSCR)延伸計画(第2期)、NSCR計画(マロロス~トゥトゥバン、第2期)、融資契約としてはNSCR拡張計画があった。また、比農務省と農林水産省の間での協力強化や、情報通信技術分野の協力についても覚書が交わされた。さらに、人道支援・災害救援協力の分野でも合意書が交わされたという。
農林水産省は同日、「農業協力に関する日本国農林水産省と比農務省との間の協力覚書」を交換したことを発表。協力の範囲として、①持続可能な農業開発のためのスマート技術の開発②食糧安全保障のための強靭で持続可能な農業および食糧システムの構築③フードバリューチェーン強化に関する協力ーーを挙げている。
また大統領は同日、議員会館を表敬訪問し、「日本バンサモロ復興開発イニシアチブ」(J―BIRD)をはじめ、国際監視チーム(IMT)や国際コンタクトグループ(ICG)、独立警察委員会(ICP)など「さまざまなメカニズムを通じたミンダナオにおける和平プロセスへの長年にわたる日本の支援」に言及し、感謝の意を表した。
▽英語学習に比活用を
大統領はその他にも、日本の観光セクターと行なった懇談会で、比日間の観光を学ぶ学生や専門家の交流に重点を置いた「教育観光」の促進を推し進めることを明らかにした。その一環で、より多くの日本の学生に比を訪れ、英語学習機会を持ってほしい旨も強調した。大統領は観光産業が「政府の単なる宣伝部門ではなく、旅行者のための便利さや快適さを追求するだけでもない。かけがえのない観光地、そこで生活する地元の人々にも同等の恩恵が享受されることを目指している」と述べた。大統領は昨年の初の施政方針演説の中で、観光をマルコス政権の最優先事項の一つに掲げていた。新型コロナ以前は国内総生産(GDP)における観光業の貢献が12・9%だった点を指摘していた。
さらに、日本の半導体、電子機器、ワイヤーハーネス事業に携わる企業との円卓会議で、マルコス大統領は数十億ペソの投資約束を取り付けた。大統領の経済チームは、これらの投資が1万人以上の雇用を創出すると予測しており、比人の雇用拡大推進を掲げるマルコス政権にとって追い風になるとしている。2021年、比はメキシコ、中国、ルーマニアに次ぐ世界第4位のワイヤーハーネス輸出国となっている。
大統領の訪日には、ルイサ大統領夫人の他、アロヨ元大統領やズビリ上院議長、ロムアルデス下院議長、マーク・ビリヤール上院議員らが加わっている。(岡田薫)