「当選ならバタアン原発稼働」 ボンボン候補の公約
ボンボン候補は父マルコス大統領が建設に着手し、凍結中のバタアン原発稼働を公約
大統領選終盤でも各世論調査で50%超えの高支持率を維持するボンボン・マルコス候補は、父・故マルコス元大統領が建設を始め、失脚直後に凍結されたバタアン原子力発電所の再整備を掲げている。ドゥテルテ政権が原発推進を決定したことを追い風に、36年間凍結されたままの「父の遺産」を子の代で稼働させる可能性が高まっている。6日付英字紙スターが報じた。
バタアン原発は、アキノ元大統領の就任直後の86年4月、ウクライナのチェルノブイリ原発事故が発生したことを受け、地震断層に近いバタアン半島での操業の安全性が問題視され凍結。
ボンボン候補は選挙運動で、2月以来のウクライナ危機による燃料価格の高騰を受け「風力、太陽光、地熱発電と共に、原発推進が必要」と強調している。36年前に凍結の契機を作ったウクライナが、今度は原発推進のロジックに利用された格好となっている。
その中でボンボン候補は、バタアン原発の再整備を韓国系企業が申し入れていることを明らかにしている。
また、クシー・エネル―相は20年、上院の答弁で「バタアン原発の再稼働は可能」という韓国・ロシアの専門家による調査結果を公表。ただし、再整備には4年の時間と最低10億ドルの費用が掛かると見込まれており、建設後の維持費は毎年2500万〜3500万ペソ(約47万8000〜67万ドル)となると試算されている。
▽安全性に疑問の声も
同原発は、91年に大噴火したピナトゥボ火山から南に57キロメートルの距離に位置する。さらに、地震学の専門家は、バタアアン州モロン町のナーティーブ火山、同州マリベレス町のマリベレス火山も「噴火の可能性がある」と指摘しており、立地条件からの安全性問題は、なおくすぶり続ける。
ドゥテルテ大統領は3月に原発開発の推進を命じる大統領令を発令。その中には、省庁間原発委員会に対しバタアン原発稼働の実現性の査定を命じる内容も含まれている。 (竹下友章)