南沙に構築物設置を検討 主権主張と国軍参謀総長
参謀総長が南沙諸島に構築物をさらに設置することを検討中と表明
フィリピンが排他的経済水域(EEZ)内としている南シナ海南沙諸島周辺に多数の中国船が長期にわたり停泊している問題で、ソベハナ国軍参謀総長は22日、記者会見で「(比の主権を主張するため)西フィリピン海(南シナ海)にさらに構築物を設置することを検討している」と述べた。中国政府が問題の海域を自国の領海内だと主張していることを受けて、比政府内でも構築物の建設を増やして主権を訴える必要があるとの議論が出ているもようだ。
同参謀総長はこのほど、在比中国大使館の担当武官を呼び、問題の海域が比のEEZ内であることを改めて明確に主張したところ、担当武官もあくまで中国の領海だと従来の主張を繰り返し、話し合いは平行線だったという。
ソベハナ参謀総長は、新規の構築物を南シナ海の島や環礁に造る場合には西フィリピン海問題国家タスクフォース(NTF─WPS)からの承認が必要だとの認識を示した。同タスクフォースも21日、声明を発表し、「(南沙諸島の)パグアサ島やパタグ島など5島に比沿岸警備隊は灯台計5基の建設を終えているが、他にもさまざまな特徴を持つ構築物を開発中だ」と強調している。パグアサ島では滑走路の建設や修理が行われているほか、海岸沿いで上陸ランプ施設も建設されている。
▽当て逃げ事件の業者
一方、米シンクタンク「アジア海洋透明性イニシアティブ」(AMTI)は、南沙諸島のフリアンフェリペ礁に3月上旬に220隻近くが集結していた画像を分析したところ、これらの船舶の運航業者が2019年6月上旬にリード礁(比名レクト礁)近辺で比漁船を当て逃げし、沈没させた事件を起こした運航業者と同じだったという調査結果を明らかにした。23日付英字紙スターが報じた。
同イニシアティブによると、衛星画像などの分析から、フリアンフェリペ礁近海では中国船が少なくとも昨年2月から相当数集結し、そのまま停泊を続けていたことも判明している。19年6月にミンドロ島を出港した比漁船が民兵の乗り込んだとみられる中国船に当て逃げされて沈没した際には、比人漁師22人が海に放り出されたが中国船は救助せず、ベトナム船が代わりに全員を救助していた。この漁船衝突問題では比外務省が中国に抗議するなど一時、外交問題となった。(澤田公伸)