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10月11日のまにら新聞から

不服従運動は困難

[ 727字|2010.10.11|政治 (politics)|新聞論調 ]

人工避妊法巡る教会

 カトリック教会は人工避妊法を擁護するアキノ政権との意見対立を政治的な対決姿勢にシフトした。人口避妊具を政府が配布すれば大統領を「破門する」とカトリック司教協議会の議長が脅しをかけて転換したのである。しかし、破門の威嚇は教会に対する世論の強い批判を巻き起こし、司教らに戦略の変更を余儀なくさせた。

 こうしてカトリック教会が次に選択したのが「道徳的選択肢」としての現政権に対する不服従運動という武器であった。教会は自分たちの教義に反する行いを政府が進めようとした場合、信者に対して不服従を呼び掛ける道義的権限を有していると主張しているのだ。しかし、人口抑制策を促進させようとしている政府に対する民衆抵抗運動を教会が呼び掛けるのは極めて問題だ。また、大統領の母親だった故コリー・アキノ元大統領が1986年に率いたピープル・パワーを再び蘇らせることも不可能だろう。

 フィリピンでは戦後、民衆による不服従運動としては86年2月の繰り上げ大統領選直後に発生したコリー・アキノの呼びかけによる不服従運動があるだけである。当時のマルコス政権による選挙不正があったとしてコリーは、国民に税金不払いとマルコス・クローニー(取り巻き政商)企業の製品ボイコット、ストライキなどを呼び掛けた。この呼び掛けに応じてエンリレやラモスが決起し、ピープルパワー革命が成功した。

 しかし、当時と今回とでは問題の質が違う。当時はマルコス政権という残虐な独裁政権に終止符を打つための不服従運動だった。しかし、今回は、はたして人口増加というくびきから国民を解放し、貧困と悲惨な生活という暴虐を終わらせるための呼び掛けであるのだろうか。(6日・インクワイアラー、アマンド・ドロニラ氏)

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