台風ヨランダ(30号)
台風の影響で海と空の便の欠航相次ぐ。港、空港では足止め客の姿が目立った
ビサヤ地方を横断した台風ヨランダ(30号)の影響で8日、空、海の便に欠航や遅延が相次いだ。各地の港や空港では、足止めされた多数の乗客の姿が見られた。
マニラ港ではこの日、フェリーの発着遅延により、多くの乗客が予約変更を余儀なくされた。マニラ北港第4埠頭(ふとう)の乗船券売り場前には、大きな荷物を抱える乗客約15人が足止めされていた。乗船券売り場の関係者によると、7、8両日で乗客約400人が予定を変更したという。
ロジャー・アレリヤーノさん(39)は、母、妻、11歳と9歳の娘と一緒に7日午前、バコロド港行きの船に乗る予定だった。ルソン地方ラグナ州で警備員として働いていたが、最近職を失ったため、借家を引き払い、一家でふるさとに戻る決断をしたという。
家族5人分の乗船代金は総額7500ペソ。安宿に泊まる金もないため、首都圏が豪雨に見舞われても、変更便の出る12日まで海からの風が吹き付ける乗船券売り場で過ごす予定。昨晩は乗船券売り場の椅子をベッド代わりにして眠ったという。「屋根が付いているだけましさ」と次女を抱き寄せ、肩を落とした。
国内線の大半が欠航となったマニラ空港第3ターミナルでも、荷物を抱えて長椅子にぐったりと座り込んだり、床でうずくまり仮眠をとる足止め客の姿が目立った。
ペドリト・グアリンさん(30)は7日の便でミンダナオ地方西ミサミス州オサミス市に帰る予定だったが、欠航になり、9日まで2日間、空港で過ごすことになった。2度目のサウジアラビア就労に向け、首都圏マカティ市の人材派遣会社で必要書類にサインするために、オサミス市から1泊予定で首都圏に来た。
サウジアラビアでは建築設計士として働く。給与は月額約4万ペソ。あとは故郷で派遣会社の最終調整を待つだけという。「ただでさえ出国の準備で親類に借金がある。マニラへの交通費も自腹。でも食べ物さえあれば、2日間くらい空港の床で寝るのも気にならないよ」と余裕の表情を見せた。(鈴木貫太郎、大矢南)