台風ヨランダ(30号)
ビサヤ地方を横断し、3人死亡、7人負傷。接近前、進路の31州で75万人が避難
フィリピン気象庁によると、猛烈な台風ヨランダ(30号)は8日午前4時40分ごろ、ビサヤ地方東サマール州南部に上陸し、レイテ、セブ、パナイ各島など同地方を横断した。上陸時の中心気圧は895ヘクトパスカル、最大瞬間風速は90メートルに達したが、同日午後6時までに確認された人的被害は、死者3人、負傷者7人にとどまっている。接近前、31州で約75万人が避難を終えるなど、事前の安全対策が功を奏した可能性がある。
8日午後10時現在、台風はルソン地方パラワン州コロン島の西30キロにあり、時速35キロで西北西へ進んでいる。9日未明には、西フィリピン海(南シナ海)へ抜け、パラワン州などに発令中の警報も順次、解除される見通し。
8日午後6時の国家災害対策本部発表によると、死亡した3人は、感電と落雷が原因。上陸地点となった東サマール、レイテ両州などでは、記録的な強風と雨に見舞われたが、洪水や倒木による死者は確認されていない。台風接近前、進路周辺の31州32市181町で、約15万2千世帯、74万8千人が避難を終えていたとされ、犠牲者の少なさにつながった可能性がある。
被災地では通信網のまひが続いており、9日以降、被害状況が明らかになるにつれて死傷者数が増える恐れがあるが、コロマ大統領府報道班長は8日午後、「政府の呼び掛けに応じて、国民が台風接近に備え、自治体が危険地域などに住む住民を事前に避難させた。その結果、犠牲者が少数にとどまった」との声明を発表した。
一方、国家送電会社(NGCP)によると、東サマール、サマール、レイテ、ボホール、北スリガオ、セブ、東・西ネグロス、ソルソゴン各州の一部地域では、送電施設のトラブルで停電が発生した。天候の回復を待って復旧・点検作業に着手するという。
また、レイテ、セブ州などのでは広域停電が発生し、一部幹線道が洪水などで不通になった。マニラ空港を発着予定だった国内便は欠航が相次ぎ、国際線の運航にも影響が出た。(酒井善彦)