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比日新時代の芽生え

第4回 ・ 日本のアニメの登場人物に憧れてコスプレをする比の若者たち

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ポーズを決めるデニス・ソリスさん(左)とレイシェル・ビリャヌエバさん=カビテ州イムス市で写す

 「このキャラクターになりきりたい」。その思いが人々をコスプレに走らせる。日本のアニメや映画などの登場人物を真似するコスチューム・プレイ(略称・コスプレ)をする人々は世界中にいる。フィリピンでも、サブカルチャーとして根を下ろす。コスプレの世界にハマる若い世代に、日本文化への思いなどを聞いた。

 コスプレは、日本ではSFアニメの流行とともに1980年代に広まったといわれ、現在では「世界共通語」になっている。コスプレをする人物をコスプレイヤーと呼ぶ。

 フィリピンで最大のコスプレ団体「コスプレ・ドット・ph」によると、最初のコスプレ大会は2000年8月にフィリピン大学ディリマン校で開かれた。その後、サブカルチャーとして流行した。「コスプレ・ドット」の調べでは、コスプレの対象の8割以上が漫画とアニメの登場人物で、ゲーム、映画が続く。

 去年12月22日、ルソン地方カビテ州イムス市で開かれたコスプレ大会には、2人の女子大学生のコスプレイヤーが来ていた。

 デニス・ソリスさん(15)=イムス市=はこの日、竹宮ゆゆこ著のラブコメディ漫画「とらドラ!」の主人公、逢坂大河の制服衣装を着て大会に出場した。飛び級で、既に大学1年。衣装は、母親(56)の友人が無償で製作し、手に持った木刀は、家にあった木の棒を兄(29)がのこぎりとやすりを使って作ってくれた。買ったのは金髪のかつらと靴だけ。「衣装にはほとんどお金をかけていない」

 持っているコスプレ衣装は全部で5着。すべて別々のアニメの衣装で、制服のコスプレが多いため、大学へ通う普段着としても活用している。

 10年前の5歳ごろから日本のアニメを見始め、アニメ好きの兄の影響を受け、どんどんハマっていった。2年前に民放テレビ局で放送していたアニメ「とらドラ!」を見て、「女子高校生の主人公に憧れ、その人物になりきりたい」と思ってコスプレを始めた。コスプレをしていた友人が周りにいたため「恥ずかしくない」と言う。

 ソリスさんと一緒に来場した、友人のレイシェル・ビリャヌエバさん(17)=イムス市=は「人前に出るのは恥ずかしい」という理由で不出場。しかし、レイシェルさんも谷川流著の学園漫画「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」の主人公の衣装を着ていて、カメラを向けるとポーズを決めて微笑んだ。

 67人が出場したこの日の大会で、ソリスさんは3位入賞を果たせなかった。しかし「これからもコスプレを続けていきたい」と、熱意は変わらない。

 日本に関して2人は「日本語はほとんど分からない。行ったこともない。行くなら秋葉原か沖縄」と声をそろえた。秋葉原では、アニメや漫画の衣装やグッズをふんだんに売っている。沖縄は海がきれいだからだ、という。

 ソリスさんは現在、首都圏マニラ市のデラサール・カレッジ・オブ・セイント・ベニルデ大学に通い、芸術を専門に勉強している。日本の文化をもっと知りたいと思い、国際関係を学べる別の大学を受験したが、不合格になってしまった。

 写実絵画やコンピューターアニメーションなどを授業で学ぶソリスさんの夢は、漫画やアニメ関係の仕事への就職だ。「シナリオ展開や画風など、日本の漫画やアニメにひかれる。日本とつながる仕事をしたい」と目を輝かせた。

 ソリスさんが受けている芸術の授業には、20歳前後の日本人女子留学生も出席している。授業のことや日本の文化に関する会話を交わしながら、日々、勉強に励んでいる。(篠塚辰徳)

(2013.1.5)

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